共済組合中国中央病院
手術支援ロボット遠隔操作実験
2台のサロアで不具合など確認
2025年01月20日号
鷲尾副院長ら将来性に手応え
公立学校共済組合中国中央病院(福山市御幸町上岩成148─13、玄馬顕一病院長、電084・970・2121)は12月21日、リバーフィールド㈱(東京都)製の手術支援ロボット「Saroa(サロア)」を使った、遠隔手術の実用実験を実施。米国スペースX社が運営する低軌道衛星通信「スターリンク」のサービスを利用したもので、現場用と遠隔用とで2台同時に動かして不具合やずれなどを探るのは世界初の試みという。
リバーフィールドは、東京科学大学(旧東京工業大学・旧東京医科歯科大学)の研究を元にした国立大学発ベンチャー企業で、手術支援ロボットの研究や開発、販売を行っている。サロアは空気圧制御によって「力覚」を再現したのが特徴で、従来の電動制御とは違う柔軟で繊細な駆動により、遠隔操作でありながら実際に自分の指で手術を行っているのとほぼ同等の感覚で施術することができるという。
同日は鷲尾一浩副院長・呼吸器外科部長(59)が上京。リバーフィールド内の操作機器(サージョンコンソール)を使って、中国中央病院内の機器(ペイシェントカート)を遠隔操作しながら豚の摘出肺の肺葉切除術を行った=写真上。さらに、病院側ではもう1台のサロアを使って、呼吸器外科医長の荒木恒太医師(38)が遠隔でない操作を行うことで、タイムラグや通信の断絶などの不具合について確かめた=写真下。
同院は備後地域での年間肺がん治療シェア率がトップであり、有数の呼吸器疾患の治療実績があるという強みを活かして2023年12月にサロアを導入。24年4月から肺がんや胸腺腫など、11月末現在で53例の手術に活用してきた。25年からは、消化器外科領域でも運用する予定という。
鷲尾副院長は「通信速度が最も遅い回線でもストレスなく使えました。画像が一部荒れたり途切れたりする瞬間はありましたが、光専用回線などを通せば不都合なくなるでしょう。医師不足が深刻化する中、都市部の名医による遠隔手術は必要になるでしょうし、同時に、地方の医師も名医の指導を受けながら手術ができるようになれば、と考えています」と将来的な手応えを述べた。