キャステムの戸田拓夫社長
倒産の危機を乗り越える、中小
企業経営者の『覚悟』を伝える

2025年07月20日号

幻冬舎から「困難上等」を上梓

様々な精密機械部品の製造販売を営む㈱キャステム(福山市御幸町中津原1808―1、電084・955・2221)の戸田拓夫社長(69)がこのほど、幻冬舎から「困難上等 地方の精密鋳造部品メーカー挑戦と復活の軌跡」(四六判、ソフトカバー、196ページ、税込1760円)を上梓した=写真。アマゾンなどの通販サイトや地元の書店などで売り出している。

折り紙ヒコーキ関連の書籍は多く出版している戸田社長が、初めてビジネス書を著した。キャステム(旧キングインベスト)は、いまや新卒採用に800人が応募する人気企業だが、戸田社長が入社した当時は従業員数27人の鋳物工場だった。そこで、今ならあり得ないような事件が起こり、倒産の危機を迎えるというショッキングな場面から書き起こされている。さらに、動けば動くほど、問題が次々と降りかかるドラマのような展開が続く。

本の紹介文には、「幹部の大量退職や金型盗難、親会社の圧力」「退路を断ち、難物製造に挑み、海外進出・親会社からの独立を実現。中小企業が逆境を生き抜く力、そのヒントが詰まった一冊」とある。いわゆる指南書やハウツーものではなく、昭和末期から平成、令和にかけての45年間で激変する社会情勢に翻弄されつつ、ものづくりの現場での事業承継の大変さ、中小企業ならではの不安定さなどを赤裸々に綴っている。

戸田社長は「タイトルにある通り、困難に立ち向かうときほど事業はうまくいくもの。うまくいかせるものだ。時代背景もあるので、当時と同じようにはできないと思うが、この本で伝えたかったのは経営手法などではなく、その困難に立ち向かう中小企業経営者の『覚悟』。逃げずに立ち向かう勇気を持つきっかけが与えられたら」と話している。