イチセトウチ
遊休施設と化した元百貨店を活用
誰もがチャレンジできる場所

2025年10月20日号

10/25・26にLWDを開催

西町ありがとう横丁の日の正面玄関

元百貨店の4度目の再生事業として誕生した複合施設「iti SETOUCHI(イチセトウチ)」(福山市西町1―1―1、谷口博輝館長、電084・959・3481)がオープンして、このほど3周年を迎えた。10月25日〔土〕・26日〔日〕には、飲食や物販、WSのブースが並んだり、ステージイベントで盛り上がったりする〝心踊る個性があつまるヒト百貨店〟「little wonder department(リトルワンダーデパートメント=LWD)vol.6」が開催される。(山田富夫)

同館は1992年に百貨店として開業したが2000年に閉店。福山市が建物を取得し、「福山ロッツ」、「リム・ふくやま」と形態が変わったが、20年8月末に再度閉館した。その後、福山市のリノベーション再生プロジェクトに福山電業

ラフタードーナツ

㈱(同市昭和町、島田宗輔社長)が応募し、1階(約5200㎡)を借り受けて、「FOOD・WORK・MARKET・DIY・CAGE・PARK」という6つの街区からなる〝小さなまち〟を創った。

建物の中と外をつなぐ道路が走る館内は、半分以上は公園のようなパブリックスペースとし、買う、食べる、働く、遊ぶ、つくる、表現する、など、利用者が主体的に参加して「新しいコト」や「面白いコト」に何でもチャレンジできる場所とした。

西町ありがとう横丁

具体的には、モノ作りが楽しめるDIYスタジオや、誰もがカフェのように気軽に使えるコワーキングスペース「tovio(トビオ)」、公園スペース「Cage(ケージ)」、「マーケットストリート」や「フードビレッジ」が設けられ、「ワークストリート」には大小20の様々なサイズのレンタルオフィスや企業の事務所が軒を連ねる。

自分のやりたいことを実現
人の出会いや交流生まれる

イチセトウチは、直近1年で約440件以上のイベントを開催し、商業施設という先入観から脱却するための様々な企画を行ってきた。福山初の本格アメリカンドーナツ店「Laughter Doughnuts(ラフタードーナツ)」を運営する塩出喬史さん(大和屋製パン工場代表)は、そうした環境を有意義に活用している一人だ。毎月第3日曜日に展開する「イチの第3日曜市」や、3周年記念の「西町ありがとう横丁」に参加するほか、異業種の3人が、本業でないラーメンや餃子、炒飯の味を競い合う「#サンロクゴ ヤタイスリープロジェクト鉄板三爺士〜炎の屋台決戦〜」など独自の企画も展開。「ここはある意味『屋根付きの公園』で、公序良俗にふれない限り、誰もがチャレンジできる場所であり、いろいろな人の出会いや交流が生まれる場です。ここは30年以上大型商業施設だったので、そのイメージがいまだに強く残っており、来て見てびっくりされる方も多いようです」。

フロア全体を使ったマルシェ「イチの第3日曜市」は、10月19日〔日〕に34回目を数える(午前10時—午後1時開場)。塩出さんは「チャレンジショップ的な意味合いで、初めて出店される方も多い。気軽に参加してほしい」と呼びかけている。

さらに、春と秋の年2回開催されるLWDも6回目になった。備後圏のみならず備中・備前圏からも参加。1日のみの参加も含めて73店舗がエントリーしている。フードトラックや、飲食・物販屋台、ワークショップなどが並び、ステージではフォークソングや歌謡曲、バンド、ジュニアオーケストラ、ダンススクールなどが様々なパフォーマンスを披露する。司会は、初日が大窪シゲキさん、2日目が安広修平さん。初日は午後1時—8時、2日目は午前10時—午後5時の予定=写真上・中は以前の様子。

両日ともプロカメラマンによるハロウィーンフォトブースを設けており、アニマルメイクのサービス(500円—1千円)も実施。ホテル宿泊券や食事券、サッカー試合観戦チケットなどが貰えるフォトコンテストも行われる。

28年には2階も有効活用
備後と世界をシームレスに

現在は1階のみで、上階フロアは空き状態になっているが、今秋から本格的にプロポーザル方式で運営業者を募り、年内に選定して、28年4月の活用開始を目指している。同館は休日や放課後の遊び場所でなく、平日も有効活用される複合施設であり、谷口館長は「遊休施設と化した元百貨店の活用という地方都市が抱える課題に対して、全国初のモデルとなることを目指したい」とかつて語っていたように、中心市街地の新しい拠点として注目を集め始めている。

手前右端が谷口館長、2列目右端が塩出さん

さらに、昨年春には上場企業の㈱北川鉄工所(府中市)が、甲山工場(広島県世羅町川尻)内にあった技術部門を同館内に移転した。駅に近いという交通利便性の向上による通勤時間の短縮や出張などの機動性の向上▽顧客やサプライヤーとの意思疎通の増加▽企業や大学との協業のしやすさが見込める▽有能な技術者の採用や社員のモチベーションUPが期待できる、などが移転のメリットとして挙げており、同様に出店を目指す潜在的顧客は多いと予想される。ITの進化により、リモートワークやネット会議などが盛んに行われているが、最終的には人と人とが対面する場が必要になることが多く、今後の活用が大いに期待できるという。谷口館長は、「この春からは『みんなでつくるクリエイティブな公民館』というコンセプトの下、地域の交流拠点としてもっと利活用していきたい」と話す。また、「周辺地域とシームレスな空間である『iti SETOUCHI』は、福山市を中心とした備後地域と世界とをシームレスにつなぐ施設になりえると思います。様々な挑戦ができる場として活用してほしい」と意気込んでいる。