陶芸家 香山善弘氏
春日大社の神事に用いる酒器制作
国内最古の酒蔵で醸される酒用に
2026年07月01日号
皇室献上品「備前緋襷 缶(ほとぎ)」と命名
備前焼工房「香神窯」(広島県神石高原町時安5020―4、電0847・81・0133)の香山善弘氏はこのほど、世界遺産「古都奈良の文化財」の一社・春日大社(奈良市春日野町)で催される神事後の直会に使用される「缶(ほとぎ)」の作成を受注。「備前 緋襷(ひだすき)缶(ほとぎ)」と命名し=写真、年内に400―500個を納入するという。平安時代の859年に創建された重要文化財「酒殿」で醸造される伝統的な濁り酒「御神酒(社醸酒)」を入れ、3月13日に斎行される「春日祭」の直会で参列者に供されるという。
サイズは径約12㎝の球状で、約1合入り。口の部分は濁り酒が滞らないよう広げ、大きめの形にした。コルクで栓をし、首元には卸先でアケビの蔓を巻き付ける。当日の直会では濁り酒が振舞われるが、飲めない人向けにお土産品として手渡されるという。
備前焼は釉薬を使用しない焼き物で、そのルーツは、5世紀頃に朝鮮半島から伝わった須恵器(すえき)にあるとされ、1200年前の平安時代には岡山県南部で作られていた。現代の「備前焼」の形になったのは鎌倉時代頃からと言われている。同祭りも1200年以上前から続けられており、宮中より天皇の御代理である勅使が参向され、国家・国民の安泰を祈る御祭文が奏上されるという。
香山氏は当初制作を固辞したものの、同大社の花山院弘匡宮司に気に入られ、また、中に入る濁り酒がとても気に入ったので引き受けたという。「1200年の時を経て、日本最古の酒蔵の濁り酒と備前焼とが再会しました」と話し、「恐れ多いことですが、中に入れる濁り酒がとても美味しく、この御神酒を入れる器を作りたいと思い制作を引き受けました。今上陛下にも献上される御神酒と伺い、その器を制作できることを大変光栄に思っております。これからの作陶にも力が入り、身が引き締まる思いがします」と話していた。
香山氏は1994年に備前焼作家・山本出氏に師事し、97年に現「サンワの森備前焼工房」で独立。のちに「香神窯」として活動、2001年以降広島県美展や陶芸財団展、新美工芸会展など入選多数。福山市制100周年や築城400年を祝う記念ビアカップなどを式典用の引き出物として制作したほか、25年には「第20回世界バラ会議 福山大会」の記念品も制作した。