島田商事㈱社長
島田晋宏さん
今年3月に新社長に就任

2021年07月20日号

再創業をテーマに改革を

しまだ のぶひろ(61)

 1887年にボタンメーカーとして大阪で創業。現在は商社として、アパレル縫製副資材を総合的に扱うグローバル企業に成長した。服飾カテゴリー別に敷いたグループ体制で、大阪・東京本社に福山・岡山事業所などを含めた全国のネットワークを活かした営業を展開。今年3月に就任した島田社長は〝再創業〟をテーマに、5つの重点方針(新規取引先開拓、新規商材開発、新規取引戦略開発、新規取引分野進出、新規事業創設)を掲げ、改革を進めている。

―社長に就任されていかがですか

「兄が大阪で社長として、私は東京で副社長としてやってきました。私自身は何ら変わっていませんが周りの見方や対応が変わり、驚いています。社外からの人も情報も集まるようになり、やりやすくなった反面、『社長』という重みと責任感を強く感じています」

―東京ではどんな活動を

「アパレル大手は東京にシフトしているため、私自身も00年に大阪から東京へ移住しました。東京でのネットワーク作りが役割と考え、ファッション業界はもちろん、異業種の経営者や官僚、大学教授、芸能人、作家、スポーツ選手の方々と交友を深めています。この5月には〔一社〕日本メンズファッション協会(MFU)の副理事長にも就任させて頂きました。」

―〝再創業〟について

「コロナ禍の影響で、人々のライフスタイルや考え方などが根本から見直されています。私も曾祖父・島田定次郎の創業精神や、戦後ゼロから事業を再興した3代目社長である父の企業家精神に立ち返り、ベンチャー精神を社内に浸透させるため、テーマを〝再創業〟としました。信用の証である〝のれん〟やインフラを踏まえ、マインドをリセットし、一から創業するという気持ちで改革に取り組みます。所信表明では、社員全員で今までやって来た仕事や方法を洗い直し、考えてもらいたいと伝えました。5つの重点方針を軸に、7代目社長として様々な改革を進めていきたいと思っています」

―アパレルの現状をどう見られていますか

「以前からスーツを着る機会が少なくなるなどカジュアル化が進んでいました。コロナ禍でリモートワークが推奨され、スーツの需要はますます低下しました。またSDGsの流れの中で衣料のリサイクルなども進み、これまで通りの販売が難しい時代に入りました。学生服やワーキングウエア、スポーツ向けは一定数の需要をキープしていますが、アパレルの大幅な販売落ち込みが続き、これまで通りの手間を掛けて受注していてはやっていけなくなりつつあります」

―海外展開の現状は

「1987年に最初の海外拠点を香港に出しました。当時の中国で開かれた都市は香港だけでしたから。90年代には欧米アパレルの縫製拠点が中国に展開され、わが社にとっては海外メーカーへの販路開拓の足がかりとなりました。ドイツ・ミュンヘンで行われる世界最大級のスポーツ用品見本市『イスポ(ISPO)』に07年から出展するなど、積極的に新規開拓し、日本ではあまり知られていない欧米のスポーツアパレルにも販路を広げています。ですが、グローバルアパレルは1品番当たりの生産数量が多く、副資材の仕入れもメーカーと直取引を好む傾向があります。わが社も副資材を生産する機能を持つ必要があると考え、限定されたアイテムにはなりますが、生産工場をベトナムに建設しました」

ベトナムの新設工場

―ベトナムの新設工場について

「ベトナムのプロトレード国際工業団地にあるベトナム・トリム・パーク(3万5千㎡)内に、保税倉庫や工場、検品、研究開発センター、ショールームなどで構成する施設が、昨年6月に完成しました。今秋から稼働する中核となる工場には3社の副資材メーカーがテナントとして入ります。そのうち2社は日本のスポーツ系資材メーカーのベトナム法人で、わが社も一部出資させていただきます。残る1社は、弊社が主体となる新会社『ベトナム・トリム・マニュファクチャリング』で、そこに日本の資材メーカーから技術供与と資本参加をしてもらいます」

―採用改革についても進めてこられました

トリム(服飾資材)モンスターズ

「問屋業は拠点等のインフラも大事ですが、やはり人が全て! 『企業は人なり』と考え、入社して10年間は社内の規程を改変したり、採用の方法を変えたりなど、人材採用の改革を行いました。〝ファッションが好きで、海外志向もあり、愛嬌のある人〟を中心に採用し、若い女性社員たちも海外駐在員として目覚ましい活躍をしています。海外アパレルへの営業展開は香港の駐在員、ローカル採用の社員の力無くしてありえませんでした。ボタンなど20種の副資材をモンスターにキャラクター化したカラフルなイラスト『トリム(服飾資材)モンスターズ』は、展示会や広告などに使っていますが、商品企画ユニットの女性社員の発案で生まれたものです」

 

岡山事業所

福山事業所

 

 

 

 

 

 

 

―福山・岡山については

「重要な拠点です。ワーキング中心の福山にはここを本社とする同業者もあり、わが社はいわゆる〝新参者〟ですが、社員達の頑張りで、この地に上手く溶け込めていると思います。スポーツ資材に関しては、業界でも一日の長があると自負しておりますが、ワーキング分野や学生服の体育衣料はスポーツ資材の活用を求めていますので、そのノウハウを活かしていきたいと思っています」

―今後の展望について

「大企業のサラリーマン経営者は自分が社長の間に、最高の売上と利益を目指します。その中で多少無理してでもということがあったりするかもしれません。ですが、私は150年、200年、場合によってはそれよりも長く、会社が存続していけることを目標にしていますので、私が社長の時には、種をまいて苗を育てるだけでもいい。そのために、今、すべきこと、それが再創業なのです」

▽島田商事㈱=大阪本社(大阪市中央区)・東京本社(東京都中央区)。福山事業所(福山市駅家町近田1018―1、電084・976・0498)・岡山事業所(倉敷市児島元浜町115―16、電086・474・3351)ほか岐阜・枚方事業所、枚方工場。国内の関連会社は岩手県・大阪府などに3社、海外は中国(香港・上海)・タイ・ベトナム・インドネシア・アメリカなどに11社。

▽島田晋宏=1960年5月22日生まれ。大阪府出身。84年同志社大学卒業後、キッコーマンに入社。90年三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ& コンサルティング㈱)を経て91年島田商事に入社。2008年副社長、21年3月に代表取締役社長に就任。大学時代は喜劇研究会で漫才を。同会の同期には俳優・生瀬勝久も在籍し、一緒に朝日放送でアルバイトもしていた。その頃より小説家・百田尚樹とも懇意になるなど、業界でも人脈・交友関係の広さは有名。