今日の一句
猪がやつぱり出たと駅待合

2019年12月10日号

大倉祥男(俳人協会評議員・赤磐市在住)

 駅舎で列車を待つ間、地元住民らしき男たちの話が耳に入ってきた。ひとりの青年が自宅前の道路で大きなイノシシを見たと言っているのだ。郊外とはいえ周囲は住宅ひしめく新興団地である。噂には聞いていたがやっぱり出るのだなとまくし立てる男の話に周囲のものは懐疑的だ。どうやら彼は最近引っ越してきた新参者で、団地創設以来の住民は我が家が建つ地域を猪が出没する田舎だと思われて不本意であるらしい。イノシシが妖怪と同次元の存在として扱われているのが可笑しかった。

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