堀病院めまいセンター
センター長 工田昌也さん
国内屈指のめまいの専門医
2025年02月01日号
めまいセンターで完治目指す
たくみだまさや(66)
日常的に起こりやすい「めまい」は、自覚症状が様々ある上、心因性のものから疲れや寝不足、脳の病気や他の臓器不全など原因も多岐にわたっていて分かりにくい。耳鼻咽喉科の単科病院だった堀病院は、眼科・頭頸部外科・内科(小児科・アレルギー科)・整形外科や接骨院まで抱え、脳内以外の頭頸部の全ての疾患に対応できるよう医師や医療設備を充実させてきた。さらに2023年には、広島県で唯一、岡山県でも2人しかいない「めまい平衡医学会専門会員」である工田医師を招き「めまいセンター」を開設した。
―めまいについて
「めまいを訴える人は、厚労省の調査によると全国で約240万人もいるようです。内耳の平衡器官の機能低下以外に、視力・体力・筋力の衰え、認知能力の低下、循環障害や脳障害、精神障害など様々な要因が挙げられ、その病態も複雑です。そのため多くの医療機関を転々とされる『めまい難民』も多いようです。そこで、耳鼻咽喉科に関わる全ての病気に総合的にアプローチできる堀病院で、総合的にめまいの診断ができるセンターを立ち上げました。原因に応じた処方や、他の医療機関への紹介、自宅でも行えるリハビリの指導も行います」
―開設後の成果は
「2023年4月に開設し、1年間で3250人(新規750人、再来のべ2500人)の患者様に対応して目標とした病名診断率100%を達成しました。メニエール病などのほか、耳以外の病気で脳梗塞などの早期発見にもつながりました。750人中、男性は242人で、女性は508人とほぼ倍です。男女とも40歳代から多くなり、70歳代が最も多くなりました」
―テーマに選んだ理由は
「大学で内耳の平衡器の研究に携わりました。大学院を3年で卒業し、同研究では世界最高峰だったスウェーデンのカロリンスカ研究所の、ノーベル医学賞の選考委員も務める教授の元へ押しかけました。何とか認めてもらえ、そこで日本人で最初に博士号も取得しました。帰国後は、専門医・指導医として頭頸部のがん手術などを中心に携わってきましたが、年齢を重ねてきたので、めまいの総合的な研究にシフトしました。例えば突発性難聴やメニエールなど治りにくい病気を治す方法がないか、機能しなくなった細胞をどうやったら回復させることができるのか、など研究を続けています。堀病院では、後進を育成しつつ、研究と臨床が同時に行えるのでとても有意義に勤めています」
―今後の展望について
「めまいは自覚症状の一種です。全ての患者様のめまいが完治するよう、『正しい診断、適切な治療でめまいは治る』を目標に頑張って参ります。また、その病気にならないよう日頃から気を付けることもできます。堀病院のHP内で、めまいセンターのコラムの中で様々な情報を発信しておりますので、ぜひご参照ください」
▽堀病院=福山市沖野上町3―4―13、宇髙毅理事長、電084・926・3387
▽工田昌也=1958年、広島市生まれ。広島大学附属高校卒。82年広島大学医学部卒。85年広島大学医学部大学院卒。88年スウェーデン、カロリンスカ研究所大学院卒。広島大学講師、診療准教授を経て、2023年4月より堀病院へ。医学博士(広島大学、カロリンスカ研究所=日本人初)。Barany Society会員(18年)。The Prosper Meniere Society 会員(1988年)。日本めまい平衡医学会専門会員(95年)、相談医(2011年)、代議員を経て現・参与。