阿じ与志
店長 山岡正侍さん
食材探しが店の命

2025年06月01日号

やまおか しょうじ(49)

飾り立てず、潔く

福山市昭和町10─6
電084・931・5613

阿じ与志は、山岡正侍さんの父・修二さんが、東京で修業した後、福山に帰り1976年4月、開業した。店舗は純和式。看板は無く(開店当初はあったが美術品だったため盗まれる)、暖簾に店名があるのみ。「どこでも食べられるものではなく、ここでしか味わえない料理を出す」ことにこだわっている。ミシュランガイド2つ星を獲得しており、知る人ぞ知る、福山の名店である。

─修業時代のことを話して頂けますか
「東京での修業は約8年で、天ぷら『日本橋・天菊』に始まり、都内や埼玉、軽井沢など複数の日本料理店で、和食・懐石料理について幅広く経験を積みました。2003年に福山に帰り、家業に従事しています」

─ここでしか味わえない料理を出すことにこだわっているそうですが
「店のやりかたにこだわりがありまして、魚・野菜は走りのもの、旬のもの、季節のもの、天然もの、上質なものだけを使います。『食材七、包丁三』の喰い切り一品料理を、飾り立てず、潔く調理して味わって頂いています。店に『持ち味』がなければ、ただの魚屋です。お客さまにはどこでも食べられるものではなく、阿じ与志でしか味わえない料理をお出ししたい、と努めています」

─食材のこだわりについて話して頂けますか
「父は『食材探しが店の命』を心情としていて、当店は食材の質を最重視しています。どんなに腕が良くても、旬を外した魚では美味しくならない。フグ料理は店の看板料理で、10月から3月末までお出ししています。11月から1月が旬で、特に美味しいです。天然シロのトラフグ、3キロ以上の極上品を、時期には毎日確保するようにしています。このようなフグは、本場下関でも毎日かぞえるほどしか入荷しません。お客様に美味しく味わっていただくには、いつも、旬の最高のものを最上の状態でお出しすることが一番です。そのため品書きを増やすことができません、品書きを増やすと最高のものを最上の状態でお出しすすることができなくなります。ご容赦下さい」

─これからの季節はどんな魚を
「季節によって主役の魚は変わっていきます。6月初めからお盆までは『ハモ』と『アコウ』が主役ですね。魚を一匹丸ごと使い、片身は刺身、片身は焼き物や煮物などに使います。熟成は行わず、あくまで新鮮さにこだわっています」

清潔感あふれる店内

─仕入れにもこだわりが
「同じ種類の魚でもその時々の状態によって味が異なるため、魚の仕入れや提供は目利きと経験が重要です。主に父が、必ず手で触れ、自分の目にあうものを一匹一匹よりわけ、瀬戸内の魚を中心に仕入れます。常に最良最高の状態でご提供することを、心掛けています」

※営業時間午後5時─10時。休みは日曜・年末年始・盆(祝日は営業)。店舗の裏に駐車場あり(4台)。

▽山岡正侍=1975年11月14日生まれ。福山市出身。1988年崇徳高校卒業し大阪学院大学に入学、高校大学を通してアメリカンフットボール部に所属。その後、「日本橋天菊」(東京都中央区兜町)などで和食全般を学び2003年帰福、阿じ与志に入る。