神石高原地域創造チャレンジ基金
インパクトフォーラムを開催
設立から6年─その成果を発表

2023年11月20日号

2017年9月設立の〔一財〕神石高原地域創造チャレンジ基金(以下神石高原チャレンジ基金、広島県神石高原町小畠2025、上山実代表理事、http://jinseki-kikin.jp/)は地域に新しいビジネスチャレンジを創り出すことを目的に、事業資金支援及び事業運営支援を実施。これまで10事業者に対し、総計約1億円の支援を行った(23年4月末現在)。「神石高原チャレンジ基金インパクトフォーラム2023」=写真=を10月末に開催し、6年間の成果を発表した。

 

神石高原チャレンジ基金とは

神石高原町地域における産業の振興を図ることで地域のにぎわいを創出し、継続的なコミュニティーとして発展拡大することを目的に、事業資金支援や事業運営支援を実施。8月と12月の年2回、事業を募集し、審査を経て支援先を決定する。

町が支援資金を財団に貸付け、財団はそれを基金として3千万円を上限に、支援事業所に種類株式での出資もしくは、私募債をゼロ金利で引受ける。支援を受けた事業所は最長7年間で全額を償還する。償還された資金を基金に戻し入れることで再度資金支援をおこなう基金の循環を行っている。そこが補助金とは大きく違う仕組みとなっている。

神石高原チャレンジ基金では、この6年間で、古民家を活用したゲストハウス事業、新たな酒「浄酎」の製造販売事業、ドローンスクールの運営事業、よもぎ茶の製造販売事業、ジビエ肉を活用したペットフード事業など、10事業者に合計9890万円の事業資金支援を行った。これまでの支援先10件の効果として、スタート時の支援先合計の売上高600万円が1億3千万円に増加し、雇用は8人から20人に拡大したほか、チャレンジ機運の醸成にも成果をあげている。また、審査、承認を経て採択されるため、信用補完が受けられ、金融機関借り入れや助成金獲得の実績に繋がっており、その金額の合計は2憶7824万円だった。

 

活用事例の紹介

肥育牛舎の様子

17年に支援先として決定した㈱ヴィレッジホーム光末(光末幸司社長)は、牛の繁殖経営をしていたが、2千万円の資金支援を活用し、ブランド「神石牛」の肥育経営を始めた。19年3月に新築牛舎を稼働させ、同年12月には子牛牛舎を完成させた。10月1日現在、繁殖素牛59頭、子牛45頭、肥育牛15頭を飼養し=写真下、24年5月に出荷を開始する予定という。

22年の支援先として決定した神石高原グリーン電力㈱(松井泰二社長)は、2700万円の支援資金を小規模水力発電の民間による売電事業に活用。落雷により停止した仁吾川発電所(別名 豊松発電所)の再稼働に取り組んだ。22年7月に着工、同年11月に発電所の電気設備が整った。23年5月に堰堤工事が完工し、現在は試験運転中で11月から本稼働の予定という。松井社長は「山林の中にある発電所の近くに仁吾川の見事な二段滝『魚切の滝』(うおきりのたき)があり、将来的には観光資源としても活用できる」と話す。

 

今後の展開について

引き続き、同町の新規事業創出に取り組む方針で、新しい募集形式を検討し、申し込み事業者の拡大を図る。また、支援先として選ばれなかった事業についても、見直しを検討してもらうなど、事業を育てる仕組みや仕掛けづくりにも取り組むという。

上山代表理事は「今後も継続して支援先事業者の皆さんとともに、活動を続けてまいります。また、事業遂行の苦労を乗り越えた経験とノウハウは、広く地域創生を目指す全国の仲間たちとも情報を共有し、地域創生のプラットフォームとなるべく尽力してまいります」と話している。