備後表継承会
備後表の業界関係者らで発足
備後い草の保存継承目指す
2018年05月10日号
福山大学工学部建築学科教授の佐藤圭一さん(45)は4月1日、地元の備後い草や備後畳表の関係者らと図り、任意団体「備後表継承会」を発足させた。同27日にアトリエ本郷(福山市本郷町3020)内「藺庵(ゆあん)」で第1回役員会を開いた。今後は地域協働による「備後い草(地草)による備後表」の保存と継承を目的に、毎月1回役員会を開くという。
会長には佐藤教授が就き、副会長は松岡久史さん(畳表経糸整経マルヱ㈱取締役、渉外担当)と佐野達哉さん(㈲佐野商店社長、備後担当)、幹事長は徳岡 旭さん(徳岡伝統建築研究所一級建築士事務所所長)、顧問は徳岡秋雄さん(㈲徳岡工務店社長)など、有力な関係者が名前を連ねた=写真は右から松岡さん、佐藤教授、佐野さん、福山大学建築学科の学生。
事業内容は、い草栽培実践と農家育成▽備後い草と備後表に関する研究▽普及啓発と研修会開催▽備後表を活かした建築企画・計画・設計・施工など10項目に及び、ユネスコ無形文化遺産への登録推進なども掲げられている。
備後い草は現在、同本郷町と三次市、尾道市浦崎町などの4事業者が栽培しているが、全てを合わせても1haに満たないという。建築関係の立場から16年夏頃に同畳表に関わった佐藤教授は、このままでは数年のうちに同栽培は絶滅する―と危機感を募らせていたところ、佐野商店の故佐野良信先代社長から誘いがあり、大学生が同年7月に刈り取り体験、11月には本郷町の田で植え付けを手伝った。今年7月には2度目の刈り取りを予定している。
佐藤教授は「畳は日本建築文化の核心と捉えています。備後表は400年前からブランドとして高く評価されており、現在でも国宝級の茶室や和室などの修復時には使うよう求められておりますが、備後い草がなくなれば備後表ブランドも消滅します。後継者を育て、後世へ継承される道筋を作りたい。来年には法人化なども視野に入れています」と話し、佐野社長(32)は「後継者には技術指導や人的支援は行いたい。UターンやIターンで名乗りを上げてくれる方には、例えば社員として雇い入れるなどし、仕事の傍ら、い草農家として自立できるよう支えていきたい」と話している。