枝広市政と情報発信②
福山市長定例記者会見現場から
若者へのワクチン接種を推進

2021年08月10日号

「高齢者接種率70%」は目標達成!

大勢の報道関係者にボードを使って説明する枝広市長

福山市の枝広直幹市長の定例記者会見が7月30日、市役所で開かれた。今回のテーマも新型コロナウイルス感染症とワクチン接種だった。枝広市長は、65歳以上の高齢者に関しては「7月末までに接種率70%以上という目標は達成した」とする一方、感染の第4波の後、「新しい波への入り口に立っている」との危機感を表明。特に「感染者の75%を30歳代以下が占めている」として、若年層へのワクチン接種の環境を整える考えを示した。(田中昭二) (注:文中の数字、表等は発表時のものです。最新情報は市ホームページ等で確認してください)

新しい波の入り口

表1「年代別感染状況」(2021年(令和3年)7月28日現在)

枝広市長は、高齢者の感染者が全体の4%に留まっているとして、ワクチン接種の効果を強調。高齢者は1回目の接種率が83・7%で、2回分のワクチンを確保していることから、「最終的には8割を超えるのではないか」との見通しを示した。  一方で、6月15日~7月28日の感染者のうち、30歳代以下が75%を占め、「10歳代以下が大きく増えている。注意しなければならない」と警鐘を鳴らした。  感染経路についても、6月15日以降の126件について、▽家庭や職場など市内で感染(79件)▽感染経路が全く不明(22件)▽感染の起因が市外と推定できる(25件)、と分析。「約2割が市外から持ち込まれている」とした。

駅前臨時スポットでPCR検査を

表2「ワクチン接種について」(2021年7月28日現在)

こうした状況を踏まえ、夏休みや旧盆を前にした大学生や保護者に向け、「感染拡大地域との往来自粛」や、「帰省前のPCR検査の実行」を呼び掛けた。出張者を抱える事業者も含め、「JR福山駅前の臨時スポット」や福山PCRセンターの積極的な利活用を促した。

64歳以下の接種状況は10・41%で、「若い世代の接種率の低さが懸念される。出来るだけスムーズな接種を推奨したい」と述べた。また、今後のワクチンの配分調整に関して、「各市町に届ける大きな役割は県が担っている」として、今後、県と連携して対応する考えを示した。

内海町の浸水対策
学校再編問題

記者との質疑応答では、7月の大雨で発生した内海町の床上、床下浸水被害への対応策などを回答。「私も現地入りして地域の人たちと話をした。どういう対策を追加できるのか、年度内に取りまとめるよう指示をした」と述べた。

また、山野地区などの小学校再編計画については、「地元では地域づくりに対する心配が大きい。これまでは教育委員会が中心となって議論してきたが、これに加えて企画部門が参加して地域の思いを受け止めたい。地域との議論を深め、地域の理解を得ながら学校再編を進めていきたい」とした。

「豊田氏起用に期待感」

リーデンローズやふくやま美術館など11の施設運営を束ねるふくやま芸術文化財団の理事長に世界的な音響設計家の豊田泰久さんを迎えたことについて、「世界的な音響技術者であり、技術を通じて文化全般にわたって識見や人脈を持っている。福山出身の方が理事長に就任していただいて心から喜んでいる」と述べ、豊田氏の今後の活躍に期待感を示した。

<課題と評価>

枝広市長の説明は、記者とのやり取りも含め、実に明瞭簡潔で、無駄がない。口調も滑らかでゆっくり丁寧な語り口で、淀みがない。さすがにエリート官僚出身者だと感心させられる。

ただし、会見テーマの選び方については物足りない。特に今回の場合、新型コロナウイルスの一点張りだ。せっかく市長が内外に向かって情報発信する場で大勢のマスコミも来ているのだから、もっと多様なテーマがあって然るべきではないのか。もったいない話だ。それとも、今の福山市には情報発信すべき話題がないのだろうか? それならコロナ1本に絞るのもやむを得ないが。

<記者から>

40~50人の報道関係者や市幹部が同一室内で長時間過ごす記者会見場は、コロナ対策から見ると危険この上ない。先般も他都市の記者会見で陽性者が出たため、市長以下、出席者全員がPCR検査を受けたと聞く。新聞報道されたのでご存知の方も多いだろう。

参加者はPCR検査を事前に受けるなり、間仕切りボードを設置するなり、或いは市長説明の後でいったん換気をするなり、何らかの対策が必要ではないかと思う。感染者が出てからでは遅いのだから。

枝広市長自身は7月中旬に2回目のワクチン接種を済ませたそうで、市民サイドから見ても安心できる。市政トップが感染したのでは、対外的にも庁内的にも、市政運営全般に重大な支障を来すからだ。その意味で言えば、市の職員も優先的に接種を済ませるべきだと個人的には考える。これは危機管理の問題だ。

職員が感染した場合、少なくともその周囲の職員は濃厚接触者とみなされ、職場自体が何日にもわたって開店休業状態に陥りかねない。市民生活に直結する職域では、市民に多大な影響を及ぼすだろう。もちろん、「なぜ市役所の職員が一般市民を差し置いて優先接種できるのか」という市民批判も当然あるだろう。

これに関して枝広市長は、「様々な見方があると思うが、まずは希望する市民が予約できる環境を整えたい。その中で職員がほかの市民と一緒に接種を受ける。できるだけスムーズに接種を受けれられる環境をつくりたい」と述べるにとどめた。

備後の雄都・福山市が率先して職員の優先接種に取り組めば、他市町にも大きな勇気を与えられるのだが、と思った私の質問は今回も空振りに終わった。