事業再構築補助金について
㈲ワーカブル
専務 藤井裕也さん

2022年08月01日号

新分野に取り組み売り上げ増へ
ワーカブル藤井専務の決断

藤井専務

コロナ禍のなかで、変化する社会状況に合わせ、企業によっては事業の転換、あるいは新規事業に参入するケースが多くなってきた。補助金で資金調達をすることで、経営が安定し、積極的な設備投資と、人材の採用が可能になってくる。経営の参考になるよう「事業再構築補助金」にスポットを当て、採択された企業を取材した。
(稲毛一郎)

事業再構築補助金は、中小企業庁が推進しており、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するため、中小企業等の新分野展開、業態転換などの、思い切った「事業再構築」の挑戦を支援する。

令和4年度第7回公募は7月1日に開始しており、申請の受付は8月下旬に開始する予定だ。検索キーワードは「事業再構築補助金」、問い合わせは、電(ナビダイヤル)0570・012・088まで。

創業以来の需要減少

㈲ワーカブル(福山市加茂町八軒屋1—2、藤井達也社長、電084・972・7751)は、鉄・アルミ・ステンレスなどの金属部品の製造を主力としていたがコロナ禍以降、1993年の創業以来の需要減少に見舞われる。

「このまま手をこまねいていたのでは将来が不安だ」、藤井裕也専務は「事業再構築補助金」の申請を視野に入れ、社内の変革に取り組む」ことを決意する。

「うちでやりましょうか」

マシンシャッター

大阪にある主要取引先のメーカーから、熟練を必要とする機械加工の仕事をもらっており、同社に出向いた際に、アクリル板とアルミ部品を組み合わせた「マシンシャッター」(シャッター式安全カバーとも呼ばれている)の需要が急増していることを小耳にはさむ。コロナ禍で医療現場や工場で需要が拡大、医療器具や工作機械をカバーしたり、病院の窓口に使われたりと、需要は無限にあるという。

マシンシャッターは、アルミ、アクリル板を製品化できるように加工して、製造した部品を梱包し発注先に送り、最終組立は発注者が行う方式で販売している。機械加工ほど熟練を必要としないので、メーカーが取り組む作業内容ではないという。

藤井専務はメーカーの社長に「自社でやるような仕事ではないですよね、うちでやりましょうか」と声を掛ける。その後トントン拍子に話が進み、受注の約束を取り付けた。

事業再構築補助金の申請

完成した新工場

マシンシャッターを製造する場合、従来の工場では難しい。新工場を建設し、製造ラインを構築する必要がある。工場の建設と、ラインの構築、労働環境を整えるための設備などを見積もると約9千万円(後に追加が出て最終的には約1億2千万円)になった。

藤井専務は普段から「何か取り組む、何か買う場合、積極的に補助金を活用する必要がある。ぶれる可能性があるので、方向性はしっかりしとかないといけない」と考えていた。新規事業を紐付けして、どういう補助金が使えるか、常に検討していたという。

早速、補助金を申請するため、細かい数字を銀行に出してもらう。「持ち出す資金が必要だが、申請すれば採択してもらえる可能性が高い」と考えた。

キーワードは「DX」と
「労働力の確保」

事業再構築補助金第1次募集では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを推奨していた。グループラインを活用し、登録している契約社員に仕事の内容を送って、出勤可能な人に来てもらう─そんな仕組みを作りたい。

DXを活用した仕組みを作っておいて、仕事量が増えれば、来てもらう人を増やす。仕事量に応じて労働力を増減していく考えだ。

作業は椅子に座ってできるような軽作業が主で、誰でもできる生産ラインを構築することで、人手不足が解消できるのでは─と考えたという。

子育て世代の母親、障がい者の方、シルバー世代など、いろんな人が幅広く働けるそんな仕組みを作り工場を運営し、近い将来、障がい者用のトイレや、保育室も作る計画を進めている。

事業計画作成し採択へ

事業計画の冒頭には「事業の概要」から「具体的な取り組み」、「現在の事業の取り組み」を列挙し、自社の強み、弱み、事業環境などを詳しく書き込んでいる。

マシンシャッターの製造方法、必要な設備、補助事業要件と適合性、さらに工場設備、設備導入、製造プロセスを説明し、細かい実施スケジュール表を載せている。

将来の展望として、マシンシャッターの市場規模を説明し、また特許技術を活用したメーカーの製品の優位性により、確実に需要が増えるとしている。

事業計画を作成し提出、後日採択された。

藤井専務は「事業再構築に取り組み、5年後年商を20%引き上げたい」と張り切っている。