OHT
丹羽高柳賞を東北大と共同受賞
電気の流れの可視化精度高める
2022年08月10日号
電子機器や生命科学発展に寄与
非接触電気検査装置の企画・製造・販売で世界トップシェアを誇るオー・エイチ・ティー㈱(=OHT、福山市神辺町西中条1118-1、羽森寛社長、電084・960・2120)はこのほど、東北大学との共同研究「高精度・高空間分解能・リアルタイム・近接容量CMOSイメージセンサー技術とその応用」が映像情報メディア学会から高く評価され「丹羽高柳賞(論文賞)」が贈られた。有機ELやマイクロLEDといった先端表示デバイスや、生細胞のイメージングなど生命科学への応用などが期待されるという。
同賞は、世界で初めてブラウン管による映像電送実験に成功した高柳健次郎さんと、東京電機大学初代学長で同学会(旧テレビジョン学会)初代会長の丹羽保次郎さんの功績を記念して設立された賞で、その年度に発表された論文の中で高い評価が得られたものに贈られている。これまで企業ではKDDIやNHK、パナソニックなど大手企業が多く受賞している。
OHTが手掛ける非接触電気検査装置は、精密な基板に触れずに検査することで、基板を痛めることなく、検査時間の短縮及び不具合のある場所を的確に発見できるため、早期の修繕が可能となり、製品の歩留率を高めてきた。通信機器やデジタル家電などで使われるプリント基板やフラットパネルディスプレイ、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネルの製造工程で重要な役割を担っている。
このたびの共同開発は、同装置の技術と、高感度CMOSイメージセンサーの研究で培ったノイズリダクション技術を応用して、微小な容量分布を2次元で高感度・高精細に動画撮影できる近接容量イメージセンサーの開発に成功した。実際に、微細な配線パターンの断線部分を非接触で特定することや、生理食塩水の水分が蒸発して食塩が再結晶化する様子を、光を用いず非破壊で捉えることなど、これまで観測できなかった絶縁材料内の微弱な誘電率の差や微小な導体の分布、導体表面の僅かな凹凸の分布を高精細な動画で可視化することができた。現在も指紋認証やタッチセンサー、材料内部の非破壊検査、液面レベルセンサーなどに使われているが、今後は更に複雑なフラットパネル・電子回路基板の非接触による電気検査や、細胞反応の可視化、植物活性度のモニタリングなどへの活用も期待されている。
羽森社長(45)の話「従来大企業の研究成果が主に評価されてきた同賞で、一地方の弊社の研究論文が高く評価されたことが嬉しい。スマホやテレビなど、日常的に使われている高精細モニターは日々進化し、基板の配線はより複雑になり、コンパクト化が求められています。非接触電気検査装置の世界シェア98%というオンリーワン企業としての責任感で、これからも技術の進歩に追随し、電子機器の進化に寄与して参ります」。