弁理士とのマッチングサイト
「iTAMON®」を開設
知的財産の専門家が課題を解決
2023年06月10日号
中小企業やスタートアップ企業が直面する知的財産の課題を解決するため、目的に応じて最適な弁理士とマッチングできるサイト「iTAMON®(アイタモン)」(https://itamon.jp/)が今年4月にオープンした。サイトを立ち上げた〔一社〕iTAMON(大阪府、代表理事河野広明弁理士)の理事として運営に携わる森寿夫弁理士(弁理士法人森特許事務所 代表弁理士)に取材した。(岩田典子)
iTAMON®とは
知的財産の専門家である弁理士の業務は多岐にわたる。知的財産権の出願から権利取得までの審査等手続代理を軸に、発明の発掘からブランド創設、知財に関する社内外セミナーの開催、先行技術や先行商標等の調査、知的財産権に関するライセンス等の契約サポート、権利維持管理や権利侵害への対応(訴訟)等、とても幅広い。地方においては特許事務所数自体が少なく、弁理士の数も少ないうえ、弁理士それぞれが化学、機械、電気、意匠、商標、不正競争、著作権等の専門分野に特化しており、企業の求める課題解決にマッチする弁理士を見つけることは難しいとされてきた。
同サイトは、そのソリューションとして、登録会員の課題にマッチする、専門分野の経験を持った弁理士を選ぶことができる仕組みを提供する。現在、1都2府2県の弁理士が登録している。
森弁理士は「弁理士の業務は、知財の権利化をコアビジネスとしていますが、近年、中国の台頭や国際競争の激化により、新商品の企画や事業戦略の立案などのコンサル的な業務や、権利活用、権利評価や権利侵害対応(訴訟)の業務が増えています。どの士業も分野ごとに特化した専門性を持っていますが、一般の方にはそのことはわかりづらいと思います。また、企業と弁理士との相性は非常に大事で、合う合わないの問題もあります。弁理士というのはメジャーではない士業ですから、より自社の課題にマッチする、専門性の高い弁理士にリーチできるよう、活用していただければ」と語る。
同サイトは無料の会員登録の後、質問を送信すると、複数の弁理士から返事がくるので、その中から自社の課題にマッチする専門分野の経験を持った弁理士を選ぶことができる(初回相談は無料)。「弁理士の活動により、中小企業の業績が伸びれば、雇用が生まれ、社会の人々が恩恵を受けることに繋がり、経済自体が活性します。その渦を大きくすることに貢献したい」と話す。
知的財産権の現在
事業活動で重要な知的財産だが、その中でも特に企業が知っておくべきことは、不正競争防止法であると森弁理士は説明する。
同法は、事業者間の公正な競争を促進すること、また、これに関する国際約束を実施するため、不正競争行為の禁止やそれに係る差止・損害賠償等に関する具体的な措置を定め、事業者の営業上の利益の保護を図る法律。1993年に全部改正が行われて以降、幾度となく法改正が行われ、民事的・刑事的措置の具体化などが進んでいる。
不正競争行為に係る例として、他社商品の模倣や、著名表示に只乗りする行為、また、顧客リスト・技術ノウハウ等の営業秘密を不正取得する行為などが挙げられる。
「訴訟に関して言えば、インターネットが普及し、情報が遠くまで届くようになったため、商標の事件が増えています。また、不正競争防止法に係る事件では、特にコピー商品の禁止規定違反が多く発生しています。最近は、完全一致商品(デッドコピー)のみならず、『模倣品』の解釈範囲が広がっていると感じています」。
日本で発売された商品は、開発側の労力を守る観点から、3年間は不正競争防止法で保護されており、先行商品が意匠登録されていなくても、輸入販売等は禁止されるので注意が必要だ。
トラブルを防ぐために
「いざ、開発した商品や商標の使用に差止め請求がなされると、その損害は非常に大きいものになります。労力と資金を無駄にしないためにも、しっかりとした調査をし、競合他社が何をしているか、分析と戦略作りは重要です。自分の立ち位置や全体像を知り、自社の強みを知ること、自社が何をしていく必要があるかを見極めるためには、やはり、調査が欠かせません。『転ばぬ先の杖』として、各都道府県に設置されている公的な知財総合支援窓口(https://chizai-portal.inpit.go.jp)や、特許等の情報を無料で検索できるサイト「J-PlatPat」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)があります。また、新商品開発のアイデアとして、過去の技術が使えることもありますので、技術開発を担当する方は、特にこうしたサイトを活用してほしいと思います。問題の解決が自社だけでは難しければ、専門知識を持った弁理士を活用するという道があるということを知っておいていただければ」と呼びかける。
弁理士法人森特許事務所=倉敷市大島505-14、電086・421・3116
倉敷オフィスと岡山駅北オフィスの2カ所を運営。2019年10月に法人化後、22年現名称に変更。同年12月に創立50周年を迎えた。化学、機械、情報処理といった特許から商標、意匠、不正競争、著作権に特化した5人の弁理士が所属する。とくに外国商標出願数はおおく、累計1,500件を超える。
森寿夫代表弁理士(60)=1963年4月21日生まれ。86年に関西大学法学部法律学科を卒業後、朝日奈特許事務所(大阪市)に92年まで勤務。その後、森特許事務所に入所。2008年、同所所長に就任。現在、特許庁工業所有権審議会試験委員、日本弁理士会常議員、〔一社〕岡山県発明協会・広島県発明協会相談員、児島商工会議所専門指導員などを務める。