府中ノアンテナ・伝統工芸
大阪万博の外国人観光客を誘致
産業観光で集客分散と販路拡大

2024年07月01日号

和の魅力とストーリー性伝える

府中市の活性化を目指す地元有志のグループNPO法人府中ノアンテナ(府中市府中町、水主川緑理事長、電0847・44・6227)と、額縁や伝統的な木製雑貨のほかオリジナル家具を製造販売する伝統工芸㈱(同市上下町階見、服巻年彦社長、電同62・3377、https://www.dentou-kougei.co.jp/)はこのほど、日本国際博覧会協会が主催する「Co-Design Challenge 2024」で選定事業者として選ばれた。大阪・関西万博で訪日した観光客に日本の伝統産業への興味を抱かせ、産業観光に誘致することで集客分散の一端を担うという。

「Co-Design Challenge 2024」は同万博の「未来社会ショーケース事業」の一環で、〝地域資源の活用や持続可能なデザインを通じて新しい日本のくらしを提案する〟という、社会課題解決に向けた共創事業を推進するプログラム。全国で11カ所の事業者を認定したが、中国地方では同社らが唯一となる。

伝統工芸は、もともと額縁製造の協力会社としてスタートしたが、額縁の持つ〝景色を切り取る〟機能をデザインに生かし、伝統的な木工技術を活用した家具づくりを10年ほど前から手掛け始めた。中山間地域ならではの社会課題である人口減少や雇用人材不足を打開するため、「木になる生活展」など木工の制作体験を含む展示会を主催したり、産業観光ツアーなどにも参加。過疎地を逆手に取った「地域の風景をデザインに取り入れ、持続可能な製品開発を通じて地域経済の活性化を目指す」取り組みを行ってきた。

2016年には、プロダクトデザイナー・森宣雄さんプロデュースで家具シリーズ「LISCIO(リッショ)」(イタリア語で「なめらか」の意)をスタートし、スツール=写真下=やテーブルなど額縁を越えた生活に溶け込む家具を製造している。万博では同社製品を展示する予定(詳細は未定)だが、万博会場で使用する家具の制作および、府中ノアンテナと共に万博を起点としたオープンファクトリーを含む地元エリアのツアーを企画している。

府中ノアンテナの理事であり、伝統工芸のスタッフでもある安田剛さん(46)は「外国人旅行客に、日本の原風景である中山間地域の豊かな自然の中で、和の文化と伝統的な木工を体験することで、制作物に〝魂(ストーリー=価値)〟が籠り、ブランドになります。台湾やシンガポール、マレーシアなど、日本に近く安定したお付き合いができる国の方への販路拡大なども狙っていきます」と話している。

※写真上・中は外国人に額縁づくりを教えるところ、同上左は服巻社長