福山あしな商工会青年部
新市地区にも「かわまち広場」を
意見交換会企画し実現化目指す

2025年06月20日号

第1回会議の様子

福山市の北部、府中市との市境にある新市町は、南から戸手・相方、新市、網引、常金丸と4つの地区に分かれ、それぞれで地理的特性に即した町づくりを行っている。ただ、中山間地域共通の悩みである少子高齢化が進んでおり、若者層の定着につながる〝町の魅力づくり〟の拠点になるものとして、同地域南部を流れる芦田川を利用した「かわまち広場」作りの声が上がった。今年9月までに地域の意見をまとめ、2026年夏には国交省へ計画を申請し、27年度以降で計画・整備を進めていく予定だ。地元の思いをまとめた。(山田富夫)

福山あしな商工会青年部(福山市新市町新市820—1、電0847・52・4882)は、同部の藤本学部長(当時)を司会進行役として、25年3月25日に新市コミュニティセンター新館で「第1回新市地区におけるかわまちづくり意見交換会」を催した。新市地区と、芦田川を挟んだ南側の芦田地区の、各種団体の長や国交省及び福山市の該当部分の担当者ら約40人が集まって、福山市北部の新しい拠点として期待される第2の「かわまち広場」創設に向けて、それぞれの立場から意見を述べ合った。

そのちょうど1カ月前に、新市老人福祉センターで催された、枝広直幹市長を囲んで「地域の拠点づくり」をテーマにした車座トークの中で、「かわまち広場」を新市地区に、という声が多かったことから、同部は「具体化する第一歩」として意見交換会を催したのだという。

千代田地域の先行事例

「かわまちづくり」とは、川とそれに繋がる町を活性化するため、水辺を活かした、様々な地域資源を活用した拠点となる空間を創る事業。福山市では、エフピコアリーナ(旧福山市営競馬場)西側の河川部に「千代田地区かわまち広場」が設けられており、トライアスロンやサイクリング、フットサル、スケートボードなどの大会会場や練習場、音楽ライブやマルシェ、BBQ場としても活用されている。

13年に廃止した競馬場跡地の利活用基本構想(14年5月)の中で、河川空間と連携した利活用の方針が示され、16年から意見交換会が催された。20年3月から供用が開始され、新福山市総合体育館「エフピコアリーナふくやま」とは、同館2階から直接広場入口へ繋がる、市道をまたぐ連絡歩道橋が設けられている。

21年には地域住民代表や公園管理者、河川管理者、学識経験者や利用団体(芦活部=11年から始まった市民有志の会)などで構成される千代田地区かわまちづくり官民連携プラットフォームが中心となって活用方法が話し合われ、利用が進められている。23年の年間利用者数は2万4千人に上った。

新市町の人口動態を説明
地域住民の意見を集める

新市町は、総人口1万8592人(24年3月末現在)で、福山市全体と比較して15~64歳人口の割合がやや少なく(市=58%・新市=53%)、後期高齢化率が高め(同17%・22%)であり、人口ピラミッドでは特に20代―30代の割合がぐっと少なくなっている。

新市町と芦田町をつなぐかわまち広場候補地

これらの人口動向を踏まえ、青年部メンバーを中心とした有志団体(かわまちづくり委員会)のメンバーは、かわまち広場が近くにできることによって「新市地区内4学区で独自に行われている祭りやイベントなどを、合同して行うことで交流が深まり、活性化に向かうのではないか」「府中市の、「こどもの国POMPOM(ポムポム)」や芦田町の動物園、駅家公園など、周辺の施設との連携を強化して福山市北部の賑わいの拠点にしたい」などの意見が出された。

意見交換会の中では、福山新市LCの佐藤英之会長や同商工会の石田勝昭会長は、「自分達も青年部に所属して、若い頃は地域活性化のため様々なことをやってきた。自分達も先輩方からそうしてもらったように、これからを背負う後輩達を我々が応援していきたい」とエールを送り、各自治体の長達もそれぞれの地域の特徴を話しつつ、地域を有機的につなぐ場所になってほしいと意見を述べた。また、候補地として戸手高校南側の佐賀田橋付近の河川敷が有力なことから、同橋南側の相方地区や福相学区・あしな台の住民代表は、かわまち広場は両地域が連携しやすく、より大きなエリアの交流拠点になりうると歓迎している。5月に行われた第2回意見交換会では、6つのグループに分かれ、示されたテーマに合わせたより具体的な意見交換が行われた。

今後の課題

河川管理者(国交省中国地方整備局)は、市町村など地域の推進主体が水辺を活かして地域の賑わい創出を図る場合、その事業を支援すること(「かわまちづくり支援制度」、23年8月現在で、全国264地点)になっており、河川管理用通路や親水護岸整備などのハード面や、民間事業者によるオープンカフェの営業許可、照明や音響などのイベント用機材の提供、などのソフト面も行うという。

だが、交流拠点ができることで、イベント時の交通渋滞や、トイレ、ゴミなどの問題も不安点として取り上げられた。さらに、中州の土砂を掘削しないと洪水の心配があるとの問題も提起された。

特に、水辺で遊んだ子ども達など、コンビニや近隣施設でトイレを借りることが難しいケースがあるとして、自由に使える公共トイレが必要との意見が多かった。また、「こどもの国 ポムポム」に隣接する川辺にある、幼児でも水遊びができるようなエリアが欲しいとの声もあった。

まとめ

藤本さんは、「川は川上から川下まで、暮らしの中で物流や人の移動を支えてきました。特に繊維や木工など、新市・芦田地区の文化や歴史、産業とは密接なつながりがあります。この度の新しいかわまち広場は、世代間交流や地域間交流ができるだけでなく、この地域の歴史や文化が感じられる地域の象徴になる場所にしたい」と意気込んでいる。

今後は意見交換会を今年秋までに数度開き、芦田川利活用推進委員会で具体化したうえで、来年夏ごろには国への申請や登録などを行ない、令和9年度以降で調査、設計や工事などが進んでいくと予定が示されている。