映画「栄光のバックホーム」
11/9に「福山完成披露試写会」
福山の団体・企業が撮影に協力
2025年11月01日号
28日から全国でロードショー

映画「栄光のバックホーム」のポスター
2023年脳腫瘍のために亡くなった元阪神タイガース・横田慎太郎さん(享年28)の生涯を描いた話題の映画「栄光のバックホーム」(製作総指揮・見城徹、依田巽)は、福山市内の団体や企業が協力して昨年、福山市内などで撮影が進められ、このほど作品が完成。11月28日〔金〕から全国でロードショーされるが、それに先がけ9日〔日〕午後2時から福山駅前シネマモード(福山市伏見町)で「福山完成披露試写会」が行われる。完成披露は1日〔土〕の東京で開かれる「ワールド・プレミア」に続き、大阪での試写会などが予定されているが、福山での試写会については、製作側の福山の関係者に対する感謝の気持が表れているのがよく分かる。(西原 洋)
幻冬舎フィルム第1回作品
メガフォンは秋山純 監督
この映画は、共にベストセラーになった横田さんの自書「奇跡のバックホーム」(幻冬舎文庫、本体690円)と「栄光のバックホーム横田慎太郎、永遠の背番号24」(同文庫、中井由梨子著、本体720円)が原作となっている。製作総指揮に幻冬舎㈱(本社・東京)の見城 徹社長が携わり、この映画をきっかけに、映像制作会社㈱幻冬舎フィルムを設立。同社の第1回作品。脚本は中井由梨子さん、メガフォンは「20歳のソウル」「明日を綴る写真館」で注目を浴びている秋山 純監督が取った。
出演者は横田慎太郎役に、新人の松谷鷹也を抜擢。重要な役どころとなる母は鈴木京香、父は高橋克典が演じ、ほかに柄本明、佐藤浩市、大森南朋、小澤征悦、平泉成ら日本を代表するベテラン俳優陣が脇を固めている。
映画のハイライトは、2019年9月26日、阪神鳴尾浜球場(兵庫県西宮市)で行われたウエスタン・リーグの対ソフトバンク戦。引退試合として臨んだ横田選手は当初、9回の1イニング限定で守備に就く予定だったが、8回2死二塁の場面でセンターの守備位置へ。直後にソフトバンク選手の中前打を捕球し、ノーバウンドの本塁送球で補殺した。世に言う「奇跡のバックホーム」だ。横田さんが亡くなった23年、阪神タイガースのセリーグ制覇と日本一が実現した。そして球団創設90周年を迎えた今年、セリーグのリーグ優勝を成し遂げた。「横田さんが奇跡を2度起こしたのでは」と、思った阪神ファンも多いという。
「奇跡のバックホーム」
CGを使わず実際に撮影

左から主演の松谷、脚本の中井さん、秋山監督、福山ローズファイターズの橋本代表
製作側は、今回の映画を製作する際、「奇跡のバックホーム」の場面を含め、野球シーンでCGを使わず、松谷ら俳優が実際にプレーすることにこだわったという。が、コトは簡単でなく、様々な苦労が予想された。
その苦労を共に担い、一体となって協力したのが、NPO法人「福山スポーツ雇用サポートセンター」(菅田雅夫理事長)や市民球団「福山ローズファイターズ」(橋本慎吾代表)、ふくやまフィルムコミッション、備後ふちゅうフィルム・コミッション、などの多くのスタッフだった。試合のシーンに出演する選手だけでなく、撮影用の球場(エブリイ 福山市民球場、倉敷マスカットスタジアム補助野球場など6球場)やエキストラの手配、地元企業への資金面の支援依頼までを献身的に行った。
秋山監督は、22年に福山出身のミステリー作家・島田荘司さんの短編を映画化した「乱歩の幻影」のロケで福山を訪れ、その際、関係者に「奇跡のバックホーム」の映画化について話し、協力を呼びかけた。その熱意にこたえたのが福山ローズファイターズの橋本代表だった。
五洋医療器のジムで肉体
改造し20㎏増の90㎏に
主演の松谷鷹也
松谷は23年から同チームに練習生として参加。野球の技術練習のほか、五洋医療器㈱(小坂正記社長)のフィットネスジム「瀬戸内ローズフィールド」(同市明神町)の協力で筋力トレーニングに取り組み、1年間をかけて体重を20㎏増の90㎏とするなど、横田さんを演じるために肉体を改造した。
そして、昨年8月、阪神鳴尾浜球場に見立てたエブリイ 福山市民球場や倉敷マスカットスタジアム補助野球場で阪神タイガース対ソフトバンクホークス戦を再現。8回2死二塁の場面で横田さんを演じる松谷がセンターの守備につき、あの「奇跡のバックホーム」のシーンとなった。選手や球場のエキストラ、撮影スタッフが固唾(かたず)を呑んで見守った中、結果は一発OK。実際の試合以上に球場全体が沸き返ったという。
福山スポーツ雇用サポートセンターや福山ローズファイターズの貢献は、映画ロケだけではない。地元企業が出資して、製作委員会に参加すると共に、「福山市 企業版 ふるさと納税」を利用した協賛で、製作費確保にも貢献した。
「野球コミュニティを構築、
次世代育成に貢献したい」
橋本慎吾代表

スペシャルイベントで語り合う秋山監督(左端)と橋本代表(右端)
8月19日にはエブリイ 福山市民球場で映画のPRを兼ねたスペシャルイベントが開かれた。秋山監督や脚本の中井さん、主演の松谷ら主要のメンバーが招かれ、会場にはファンら約120人が集まった。「栄光のバックホームチーム」対「福山ローズファイターズ」のエキシビションマッチや、ゲストによるトークショーも開かれ、映画の全国公開を前に盛り上がりを見せた。
秋山監督は「難しい条件の中で実現した『栄光のバックホーム』は、福山の多くの方の協力なしには実現しませんでした」と感謝の言葉を述べ、橋本代表は「映画を通して、野球の魅力を再発見していただければ幸いです。我々は地元にスポーツパークを開設し、青少年スポーツの支援に役立つことを目的に活動をしております。今後もさらに『野球コミュニティ』を構築し、次世代の育成にも貢献したいと考えております」と抱負を述べた。
▽福山ローズファイターズ=福山市入船町2―1―24、電084・971・8977。南渕時高監督。福山スポーツ雇用サポートセンターが運営母体となり、2016年に誕生。雇用対策を重視したグラブチームで、福山市民・企業・行政など、幅広い支援を受けて活動し、選手(26人)は雇用企業15社の正社員として、仕事とスポーツの両立を図り、限られた時間の中で効率的な練習・トレーニングを行い試合に挑む一方、青少年・少女育成のための地元に根差した活動を展開している。