府中市は消滅せず
官民一体で地方創成を

2015年02月20日号

 少子高齢化や都市部への過度な人口集中により、地方都市の過疎化は全国的な問題になっている。国も「地方創成」として「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を組み立てて人口減少に歯止めをかけていく方針を固めている。昨年5月に発表され話題を呼んだ「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」において、府中市は広島県東部で将来消滅する可能性が高い都市のひとつに挙げられた。だが数年前から「コンパクトシティ」構想を踏まえた「都市再生整備計画」を着々と進めてきており、2010年からは、商店街を中心とした事業者が府中商工会議所の協力を得て、地元商業の活性化に意欲的に取り組んでいる。人口4万2千人余りの小都市が、「地方創成」の良いモデルとなるのか、取材した。 (山田富夫)

 府中市では、かつて産業の主要な柱だった繊維・家具製造分野が衰退し、昨年4月からは市全域が過疎地域の指定を受けた。だが同市は07年から「コンパクトなまちづくり」をテーマに中心市街地活性化基本計画に基づいた取り組みを続けてきた。13年4月からは第2期が始まり、中心市街地(府中町を中心に出口・元町と府川町の一部)での「賑わいの創出」や「歩いて暮らせる地域の形成」を目標に、18年3月まで33事業が進められている。
 
中心市街地活性化事業

府中の図

 

 中心市街地はJR府中駅周辺から北西部に渡るやや楕円状の地域で、学校や病院、商店街、市役所や消防署、図書館等公共機関が集中している。町内は道幅が狭く、古民家や高齢者宅が多く、通学路等もあることから、「歩いて暮らせる」ことを目標にした整備計画を進めている。
 明治5年創業の元料亭旅館「恋しき」や石州街道といった観光拠点近くには「お祭り広場」というイベント会場兼駐車場を設け、このほど観光案内所や名物の「府中焼き」の店が入った「地域交流センター」も近隣に完成した。 府中駅は北口しかなく、主要幹線道路である国道486号線との連絡が不便で活性化の足かせとなっていたが、駅の南側から486号に面した一角に「道の駅」を設け、市内外の人の交流拠点とする予定だ。南側の交通拠点として確立し、将来的には南北を連絡する通路も建設して駅北側への横断や、中心市街地から府中天満屋や文化センター、市役所へのアクセスも容易にする計画だという。
 
まちなか繁盛隊誕生

 中心市街地には3つの商店街があるが、多くの店がシャッターを下ろしてしまっている。そこで10年に、同所の商店主ら8店舗(現在は16店舗)と府中商工会議所とが協力し、府中まちなか繁盛隊(高橋良昌代表、電0847・45・8200)が結成された。所属商店街の枠を超え、意欲ある有志が集まって意見を出し合い、「にぎわいの創出」「個店の魅力アップ」を目標に様々な企画を実行してきた。そのひとつとして商店街内の旧広銀跡地「みんなの公園」を活用し、毎月第2土曜日に「みんピク(府中でみんながピクニック)」というイベントを興し、ハンドメイド作家や自然食材などを中心にしたフリーマーケットを開いている。このイベントの出店者がここへの出店をきっかけに、同所隣にある築100年の古民家を改装(リノベーション)した「府中■町家商店」で創業したケースもある。 ほかに「府中まちなか わく♪わく♪ お店めぐりツアー」や「府中まちなかお店ゼミナール【まちゼミ】」等、店のPRと集客を兼ねたイベントを企画してきた。  
 さらにこのほど、小冊子「府中まちなか一店逸品BOOK」を製作した。昨秋から取り組んできた「一店逸品」運動の成果をまとめたもので、隊員事業所を中心とした15店舗が消費者にお勧めする逸品を紹介している。「スタイリッシュな冊子で紹介されて、各店の知名度が上がり、店の方のモチベーションが上がりました。売上にも効果が出てきているようです。また、まちゼミを通して顧客と近い距離で自分達の知識・技術・店について紹介できたことがさらに拍車をかけているようです。店主自らの接客意識が高くなれば、それだけ店が活気づき、町の活性化にもつながるようです」と府中商工会議所の有永篤さん。
 1月末に行われた同冊子完成記念レセプションで北川祐治会頭は「一店逸品運動は厳しい“地方都市”で商売をやっていく、成功するための唯一の方法かもしれません。店側もこの一店逸品運動を通じて、まずは商品を磨くことが重要。商品を磨くことはお店を磨くことですし、お店を磨くということは経営を磨くということなのだろうと思います。商工会議所としても大いに応援いたします」と話していた。 高橋代表は「冊子は続編を作りたいですね。繁盛隊予備軍というべきお店は中心市街地周辺に約250店舗あります。その1割でも参加してくださり、そうした繁盛隊がまちなかの基幹店(点)となり、線となって繋がって、更には面的拡輪をしていくことこそが活性化の原動力になり得ます。府中にはいいお店がたくさんあるということを、市民の方にも再認識してもらいたいです」と話していた。
 
分断された動線を繋ぐ
 
 ただ課題もある。駅から商店街や石州街道への道筋は、廃業した店によって分断されているのが実情だ。駅前の大型家具展示場も廃業し、近隣には空地も目立つ。 だが、もう少し足を延ばすと市立図書館があり、その北側は今後整理して駐車場兼ふれあい広場化する。その北側の通りにある3軒の空き家は、このほど府中市中心市街地空き家等活用推進協議会(府中市役所まちづくり課内、岡辺重雄会長、電同43・7159)が中心となり、広島大学・福山市立大学生が協力してリノベーション(修繕等)を行った。こうしたリノベで新たな拠点を作っていけば、中心市街地の動線はさらに太くなるだろう。空き家の再生については、府中市地域おこし協力隊の藤原幸大さんが理事長を務めるNPO法人アルバトロスが窓口となり、空き家バンク(市企画財政課)と協力して進めていく予定だという。
 
まとめ
 
 この先人口減少は避けられないのが実情であり、緩やかに広がるよりも拠点を中心に集結して、役割を持った地域づくりを進めていく必要がある。中心市街地は、それ自体が居住区であると同時に公的機関の集約点であり、また、繁盛隊によって個人商店の連携が郊外型ショッピングモールと同じ役割を果たすこともできる可能性を見せた。各地域内で経済的な循環が成立し、更に外部から「府中焼き」や歴史的情緒を味わいに訪れる客を呼び込むことで活性化は実現できる。このプラスの連鎖をこのまま持続してほしい。