問われる臨空都市三原の在り方
空港民営化に備える各界の提言

2016年03月01日号

 

この特集は「空港へのアクセス網の点検整備」(14年9月20日号)に始まり「航空路線の継続と開拓」「訪日観光客の受け入れ体勢」「空港ビルの現状」と続いてきた。そして、1月20日号の「臨空広域連携協議会」の在り方」をもってこの連載の区切りとしていたが、その後「広島県空港振興協議会」において「空港運営の民営化に関する最近の動向」「広島空港経営の改革」等について特筆すべき重要な会合がもたれた。そのほか昨年度から臨空広域連携協議会に仲間入りした尾道市の取り組みや4月から運行が始まる尾道ー空港のリムジンバスの動向と合わせて、その内容をリポートしておきたい。西亀 悟

 広島県空港振興協議会の「活性化部会」(部会長・廣田亨広島商工会議所副会頭)は広島空港の将来像や今後の運営の在り方について検討するため県及び市町、経済団体等で構成する部会で、委員として福山商工会議所の林 克士会頭、広島経済同友会の森信秀樹代表幹事のほか広島県バス協会、日本旅行業協会、広島国際航空貨物運送協会の会長ら26人で構成されている。
2月10日県庁で2回目の会議が開かれ、次のように意見が交わされた。
広島空港の方向性
 広島空港が今後担う役割としてインバウンドに力点が置かれているが、これまで広島空港を支えてきたアウトバウンドを維持していく視点も継続してほしい。
 LCC(格安航空便)の活力を呼び込むことは重要だが,LCCは採算が合わない等の理由で檄退が早いという側面
もある。実際に取組みを進めるにあたっては路線の状況やタイミングも見ながら誘致を進めてほしい。
 定時性を確保するうえで山陽自動車道の渋滞を緩和することも重要であり、リニア中央新幹線の完成までにこの課題を最小限にするため、今後の具体的な取組みとして東広島・安芸バイパスの早期完成を目指すことも必要ではないか。
空港運営の在り方
 空港運営のや民間委託は世界的な流れであり、方向性としては避けられないものと思うが国の管理部分は赤字という現状もあり、民間に委ねた場合に収支が成り立つかどうかの検討も重要。結果として赤字を民間に押し付けたということになってはならない。
 収支の問題も重要だが、議論をその部分に収斂(れん)させるのではなく、今後の取組みを加速させる手段として、空港経営改革が有効かどうかという視点で考えていくことが重要と思う。
 広島空港は空港ビルディング㈱に民間出身の社長が就任して大きく改善しており、専門のプロパー管理職の登用など体制強化も図られている。空港経営改革を進めていく場合においても、これらの取組みを土台として生かしていくことが重要である。
 空港経営改革を進めていくとすれば、地元企業がどのような形で関わっていくかということも考えておく必要があるのではないか。
このうち、記者(筆者)が特筆すべき課題として関心を寄せたのが次の課題についてだった。
アクセスの改善
  会議ではアクセス改善の対策として、各委員から次の意見が述べられた。
【軌道系アクセス・JRとの連携強化】広島ー白市間にエアポート快速列車を運行し、空港ー白市間のシャトルバスバスも増便してトータル45分以内のアクセスを実現する▽ダイヤ間隔の短い「シティ電車」を広島ー白市駅からさらに三原駅まで延伸して、この方面から乗車する人の利便性を高める▽白市駅ー空港間での列車をはじめとする軌道系アクセスを整備する事業費確保のためファンドの活用も検討する。
【リムジンバスの機能向上】高速リムジンバス料金の低廉化▽公共交通機関によるアクセスの空白地域である県北、山陰地方への新規路線の開拓▽交通系ICカードの共通化やクレジットカード利用対応をはかり県外・海外客の利便性を向上する。
 なお、リムジンバスについては、おのみちバス㈱(電0848・46・4301)が4月1日〔金〕から運行することが決まり、尾道市(平谷祐宏市長)も新年度で予算を計上してそのPRに努めることにしている。
尾道発のリムジンバスは東尾道駅発が午前5時49分と午後16時45分の2便で火・土曜日は10時45分発が加わる。広島空港発は午前9時と午後9時30分、火・土曜日は午後1時30分が加わり、いずれも尾道駅、新尾道駅などを経由して、片道運賃は大人が1130円、子どもは570円となっている。

これにより尾道方面からのアクセス向上を期待できるが、1日2ー3往復ではそれも限定的なものになってしまうだろう。
現状、空港へは三原駅前からリムジンバスが出ているが、なぜか本郷駅に立ち寄らず、バス停はこの駅から800mほど離れた所にある。荷物を抱えた人がこの間を歩くのは辛いものがあり、駅前に待機しているタクシーに乗ると空港までの運賃は3千円前後を要する。
このバスが駅に立ち寄ることができればこうした負担を軽減できる。そして尾道、福山方面から列車で本郷駅に向かい、駅前でバスに乗り換え空港へ向かえるようになるとアクセス手段は多様化して利便はさらに高まるはずだ。
運行会社の㈱中国バス㈱(本社・福山市)にこのことを告げると「関係自治体などがらそうした要請を受けたことがないので」と、答が返ってきた。
実現には路線を認可している関係当局や、空港への送迎を主要な営業区間としている地元タクシー会社との折衝も必要になるだろう。三原など地元の自治体がこうした隘路を乗り越えていくことかできれば「臨空都市」としての機能はより高まってくるに違いない。
駐車無料化の是非
 広島空港へのアクセスについては、自家用車での乗り入れる方法もある。
その駐車場の在り方については、この連載でも何度か指摘していた。
たとえば「隣県の岡山空港は駐車場を無料にしている。ゆえに、福山方面から県境を超えてこの空港を利用する人が少なくない」「空港の運営で大切なのは駐車料金を稼いでいくことではない。利用者にこうした負担を強いることなく、気持ちよく飛び立ってもらいたい」と記してきた。
一方で、この駐車場は常に満杯の状態で、飛行機への搭乗時間が迫る中、空きスペースを探す人にストレスを与えている。
広島空港では今年2月1日から県営駐車場の料金を改定し、5時間以内1時間ごとに150円だったのを30分以内は無料。30分から2時間以内は1時間ごと100円といった具合に値下げした。
これによって空港への入り込み客が増え、館内での物販売り上げ等に繋がると期待している。
その観点からは意義のある施策であっても、来場者が増えると駐車場は一層混雑して、空きスペースを探す人のストレスが高まってくる。
この会議でも「駐車場の無料化」を唱える人がいたが、それと駐車場の利便を高めるのは「二律背反」するところがあり、現状の根治対策とは言い難い。無料化して、かつ空きスペースを確保するには駐車場の拡張が不可避で、その見通しがあって無料化策の意義が高まってくる。