ワイド岡山
路面電車岡山駅乗り入れ
実現に向けて動き出す
2015年02月10日号
現在JR岡山駅の東側約180mに停留所がある路面電車を駅構内まで引き入れようという計画がいよいよ具体化してきた。岡山市は4パターンの乗り入れイメージを発表し、3月末をめどにさらに詳細な絞り込みを行う。
岡山市には2路線で約4・8㎞という日本一短い路面電車が走っている。小規模ながらも経営する岡山電気軌道㈱は創立100年を超える歴史があり、黒字経営を維持して両備グループの中核企業となっている。JR岡山駅前の停留所は駅構内から市役所筋を隔てた桃太郎大通りに位置し、途中には複数の信号もある。駅と停留所を直結させれば乗り換えの利便性が高まるという考えは以前からあったが、費用負担や交通渋滞などがネックとなって進展が見られなかった。本年度になって岡山市が具体的なイメージを発表した背景には路面電車を交通手段という以上の街づくりアイテムとして利用しようとする意図が見られる。駅と停留所の間に横たわる市役所通りをどう超えるかで乗り入れイメージは4つに分類される。
1.平面乗り入れ
路線を西へ伸ばして車両をそのまま駅構内へ引き入れ、現在球形噴水がある地点に新停留所を設ける。費用は10億円弱で最も安くあがるが市役所筋を横断する時点で渋滞が懸念される。駅構内南側に新停留所を設けて高架のタクシー乗り場を新設する案もある。
2.高架乗り入れ
西川辺りから路線を除々に上げて駅2階に直結する。停留所と駅を最も近づけることができる一方、費用も40億円以上と4案の中で最高額。
3.地下乗り入れ
西川辺りから地下へ路線を引き入れて地下街に連絡する。駅からの距離は現在とそれほど変わらない。費用は34-41億円。
4.歩行者デッキ設置
駅2階から歩行者用デッキをせり出させて既存の駅前電停まで乗客が歩いて行く。費用は約20億円。デッキは桃太郎大通りの左右に枝分かれさせることもできる。また駅前交差点の頭上に直径約70mの楕円形展望デッキを設けて南側のイオンモール岡山方向にも枝分かれさせれば駅前の風景や歩行者の流れが一変するが、費用も約33億円にまで膨れ上がる。
公有民営
小嶋光信両備グループ代表は平成22年、当時の高谷茂男市長に「世界一のエコ公共交通都市を岡山市において実現」するための提言書を提出している。環境保護と高齢化に対応するためには路面電車と新型バスを中心とした新しい交通体系が必要だとし、その第1ステップとして路面電車の駅構内乗り入れを訴えた。第2ステップは路面電車を岡山駅から市役所−水道局前−岡大病院−清輝橋と延伸し、既存路線に連結して環状化。さらに駅西口や後楽園方面への延伸を目指すという計画だ。両備グループの経営にとって都合の良い提言に聞こえるが、先進諸国の中で公共交通機関を民間に任せきったのは日本だけで、現在の補助金行政では多くの地方公共交通機関は経営が成り立たずに撤退を余儀なくされると氏は主張する。公有民営によって官と民の役割を明確にした総合的都市交通システムを構築することが歩いて楽しいまちづくりにつながるという、その第1ステップが実現に近づいている。