ワイド岡山
後楽園 高校生以下無料に
兼六園とは入園者数に大差
2015年02月20日号
岡山後楽園は5月1日−8月31日の4カ月間、高校生以下の入園料を無料にする。とくに若い世代の入園者を増やすための試験的措置で、同園の入園者数は「ライバル」兼六園に大差を付けられているのが実情だ。
岡山後楽園は金沢市の兼六園、水戸偕楽園とともに日本三名園として全国的に有名だ。なぜこの三園が「三名園」として並び称されるのか根拠不明だが、明治37年に発行された写真集にすでに「三名園」の表記が見られる。このうち偕楽園は入園無料のために統計がとれていないが、後楽園、兼六園はそれぞれ岡山市、金沢市を代表する景勝地であり、しばしば「ライバル」として入園者数などが比較されている。
両園とも江戸時代に造営された池泉回遊式の大名庭園で、園内を一望した印象はよく似ている。面積は後楽園(約13万㎡)の方が兼六園(約11万㎡)よりもやや広く、大人入園料は後楽園400円、兼六園310円。しかし最近数年間における年間入園者数は後楽園の約65万人に対して兼六園は約170万人と2倍以上の開きがある。後楽園の入園者数は山陽新幹線(新大阪−岡山)が開通した1972年度に100万人を超えたが、その後40年に渡って減少傾向が続いているのが実情だ。
もっとも入園者数の違いが園の魅力の差を示すものとはいえない。近年岡山市を訪れる観光客数は年間約430万人だが金沢市は約700万人を数える。さらに後楽園が岡山市内における突出した観光ポイントであるのに対して兼六園には石川県立美術館、金沢城公園など徒歩で移動できる範囲に複数の人気観光ポイントが集中している。とくに園に隣接する金沢21世紀美術館は04年の新設ながら倉敷大原美術館を上回る年間約140万人もの驚異的来館者数を誇る現代美術館だ。観光都市としての力の差が両庭園の入園者数に反映しているといえる。
地元の入園者を増やす
この度後楽園が高校生以下の入園料無料に踏み切ったのは単に若い世代の入園者を増やすだけでなく、幼いうちから園に親しむことで将来的なリピーターになってもらおうとする意図がある。幼いころに訪れた観光地を大人になってから再訪したくなるという経験は誰もが持っているからだ。同園の運営に要する年間経費約2億6千万円のうち95%は入園料と園内亭舎の使用料で賄っているが、小中学生(入園料140円)と高校生(同400円)を合わせた入園者は全体の9%足らずで年間無料にしても減収額は4−500万円程度。岡山県内各観光地では県内、県外からの訪問者がほぼ半分ずつという統計があり、地元からの来訪者を増やすことが入園者数拡大のもっとも手っ取り早い手段だといえる。5月−8月はゴールデンウィークや夏休みの期間中で子供連れの家族や高校生の大量入園が期待できる。後楽園では今回の試験結果次第で来年度からの高校生以下全面無料も視野に入れている。