小川さんコラム

2015年05月10日号

「世界・歴史と文化の旅」No.5  シンガポール・マレーシア編(5)

『シンガポール 将来の課題』

発展著しいマリーナ地区

発展著しいマリーナ地区

  シンガポールの面積は東京23区とほぼ同じ。人口は約5百万人。個人あたりGDPは4万数千米ドルで、現在アジアでは最も裕福な国である。(日本は3万7千米ドル)。年々訪れる観光客も増加し続けている。まさに「絶頂期」にあることはまちがいない。ロシア・中国・ドバイ・大阪市もシンガポールを発展モデルにと公言していた。シンガポールはこれからも万全か?市民たちの将来への危機も耳にする。
 我々をひきつけてきたのは ①「法人税の安さ・相続制・資産課税・キャピタルゲインもゼロなどの税制」②先進高水準医療③快適さなどか? 一方、問題は①急速な人口増(外国人労働者流入に起因)による市民公共サービスの低下・交通渋滞・住宅費高騰などに対する不満②周辺アジア国の発展による相対的地位低下などが考えられる。
 世界があこがれるほどシンガポール国民は楽観視していない。生活の中での息苦しさもよく聞かされた。①オープンな政府批判のできない一党独裁体制 反面この体制が安定した社会基盤と発展もたらしたという矛盾 ②大学入学前の2年半の兵役義務とともに、若者たちがこの体制を受け入れて行くか? 経済繁栄の中「シンガポールの春」騒動は起きないか?
 あらゆる社会は矛盾を抱えながら、それを克服し発展してきた。おそらく当局も現在の「絶頂期」にあって、将来への布陣を敷きつつあるように思う。一党独裁に近い強力なリーダーシップと民主化のバランスをどのように確立して行くか、シンガポールの動向を世界中が注目している。