時代小説作家
今井絵美子さん
阿部正弘がテーマの小説
「群青のとき」を発表

2015年02月10日号

備後福山藩第7代藩主が主人公

郷土が誇る人物として再認識を

 

hyou福山市在住の時代小説作家

いまい えみこ

今井 絵美子さん(69)

時代小説作家の今井絵美子さんはこのほど、江戸末期の備後福山藩第7代藩主・阿部正弘をテーマにした単行本「群青のとき」(1700円・税別)を角川書店から発表した。幕末の志士としては司馬遼太郎(1923―1996年)作の「竜馬がゆく」の主人公・坂本龍馬が知名度を得ているが、開国を迫られた江戸幕府を老中として、外交、国防問題に奔走した阿部正弘の功績は近年、着目されつつある。今井さんに発表した「群青のとき」の執筆などの経緯を聞いた。

―「群青のとき」が発売されました

「阿部正弘は備後福山藩第7代藩主で幕末に25歳で老中に就任した。私自身、福山市在住の小説家として2000年に阿部正弘をテーマにした作品を執筆したが、当時は『立場茶屋おりき』などのシリーズ作もなく、出版社に『そんな地味な人物』と取り上げられなかった。60冊以上の作品を発表し、出版社にこの話を持ちかけ、昨年、当時執筆したものに筆を加えた。題名の『群青のとき』は開国前の阿部が造り上げた日本をイメージし、夜明け前の空が一瞬、群青色に輝く空の色を付けた」

―幕末の志士としては坂本龍馬が代表的とされていますが、それは司馬遼太郎の作品が火付け役となりました

gun「幕末と言えば、破天荒な生き方をした坂本龍馬のような人物が取り上げられることが多いが、阿部正弘は老中として真っ当な生き方で江戸幕府を支えた。特にペリー来航の際には、時の権力者の中の戦うべきだ、との意見を、今で言う民主主義の理論で自然な形で開国へと導いた。角の無い人物との言い方もあるが、39歳と早逝したが、もっと長く生きれば、違った開国を迎え、明治以降の日本は変わったかもしれない。この小説を通じ、阿部正弘をメジャーにしたいとの気持ちもあります」

―阿部正弘は昨年「NHKプレミアム英雄たちの選択開国阿部正弘不屈の外交戦略」として放映もされました

「備後福山藩では水野勝成公が有名で、地元福山では学校でも阿部正弘のことはそれほど教えてもらえなかった。群青のときは出版社の角川書店が、本に成る前に、著名人に贈った所、作家の森村誠一氏や映画監督の崔洋一氏、文芸評論家で時代小説評論の第一人者の縄田一男氏、菊池仁氏から直ぐに感想文や電話も頂いたと聞いた。帯部分にはその推薦を添えた。是非、この作品で直木賞や本屋大賞も狙いたい」

―70冊を超える作品を発表され、昨年の50冊刊行記念パーティーでは2020年の東京五輪までには100冊の刊行と宣言されました

「立場茶屋おりきは3月に第20弾が発表され、東京五輪前に100冊の刊行は終えそうです。群青のときは、県立福山誠之館高校の創設者が主人公でもあり、地元の人にも是非読んで頂きたい。これを原作にTV、映画化されることも願っている。これからも毎年1作は長編物にも取り組みたい」

▽今井絵美子=1945年7月2日、福山市生まれ。県立福山葦陽高校、成城大学文芸学部卒業。画廊経営、テレビプロデューサーを経て執筆活動に。03年「小日向源伍の終わらない夏」で第10回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞受賞。主なシリーズに「立場茶屋おりき」「照降町自身番書役日誌」「便り屋お葉日月抄」などがある。好きな言葉は「人は情の器物」。趣味は映画鑑賞とクラシックバレエ、食べ歩き。福山市御門町1―9―21ー302、電084・926・6697。