福山シティFC
スポーツを通したまちづくりWS
社会改革はチームや町道場から

2026年08月20日号

8/25はまちの課題とFCの活用

福山シティフットボールクラブ(福山市城見町2―1―22、岡本佳大代表、電084・961・4701)は7月22日、福山市西町のiti SETOUCHI(イチセトウチ)で「~スポーツ×まちづくり~福山シティFCとつくる、まちの未来共創ワークショップ」を開催。パートナー企業や行政関係者、地域団体などまちづくりに関心のある人約50人が参加した。スポーツは本来個人的なものであり、まちづくりにどう関われるのか疑問視する声もある中、チームや町道場の役割について取材した。(山田富夫)

福山市内には市名を冠したチームがいくつかある。福山シティFCのほかにも、社会人野球の「福山ローズファイターズ」、福山市を中心とした備後圏域で活動するバスケットボールチーム「びんご福山デニックス」、3人制プロバスケチームの「FUKUYAMA BATS」などで、それぞれが活躍することで、各競技人口の増加や福山市の知名度UP、交流人口・関係人口の増加、経済効果の向上などが期待されている。

ただ、プロチームを維持するためには経済的な支えも必要であり、そのためにスポンサーの募集やサポーター制度、グッズ販売などにも注力することになり、この経済的支柱とチームの人気や支持がバランスを保てていなければ維持はできない。

そこで、各チームはそれぞれ競技力の向上と同時に、青少年育成や障がい者福祉、地域のイベントへの参加など様々な社会貢献活動や〝数値化されない価値の創造〟に注力している。福山シティFCの今回のWSはその一環であり、2015年に立ち上げたチーム草創の想い「地域を盛り上げる存在をつくりたい」の検証と、今後さらに大きな器にするための土台作りに取り掛かった。
 
福山シティFCの役割とは

同WSでは、三谷繭子氏(㈱Groove Designs社長、福山市)をナビゲーター役に、ソーシャル・プロジェクト・プロデューサーの広石拓司氏(㈱エンパブリック代表取締役、東京都)をファシリテーターとして招き、岡本代表と共にサッカークラブが地域から期待されることや可能性について話した。

広石氏は、現代社会では価値観の多様化により、人間関係の分断が生じやすいが、スポーツやペット、子どもといった共通の対象は、立場を超えたコミュニケーションのきっかけ(触媒)となりうると定義。日本ではスポーツを鍛錬や精神修養などと結びつけてしまいがちだが、欧米では「豊かな楽しい時間を過ごす」ためのもので、Jリーグは発足時から後者に寄せてスポーツを通して地域を豊かにする構想があった、と振り返った。

スポーツは、自発的に動く時間▽プレーすること、応援すること自体を楽しむ▽ルールを守りつつ、勝敗が分からない緊張感を共有できる▽社長と部下、行政と住民などの立場を超えて、同じ瞬間に夢中になり感動や悔しさを共有できるもの、と解説。スポーツチームが夢を語り、市民や企業・行政を巻き込んでいくことで、「この街で何かできるかもしれない」という地域の希望やエネルギーを創出することに繋がり、故郷を象徴するチームを応援することから帰属感が高まって地域に活力が生まれるという。福山シティFCはパートナー企業が約420社あり(うち92%が備後圏)、SNSの総フォロワー数は約3万3千人に上ることから、地域をまとめる〝ハブ〟になる存在として大いに期待できる、とまとめた。

同WSは全4回の予定で、次回は8月25日〔火〕午後4時から同所で催す。次回のテーマは「まちの課題に、サッカークラブをどう活かすか?」で、福祉、子育て、環境、まちづくりなどの地域課題とクラブとの接点を考える。参加費は無料で、定員は60人。参加希望者は下記二次元コードから申し込む。

柔道家からの提言

福山大学経済学部経済学科准教授の中村和裕氏(47)=写真=は福山市出身の柔道家で、元総合格闘家(元DEEPミドル級王者)。14年に現役を引退して早稲田大学で学び、15年から福山大学の経済学科スポーツマネジメントコースに助教として勤め始めた。テーマにしたのが「プロスポーツを活用したまちづくり」で、柔道を軸に、プロスポーツの地域活性化に及ぼす影響や、教育の在り方などについて研究を深めてきた。現在は備後地区柔道連盟の理事長を務めている。

スポーツは、身体を動かし、健康維持や体力増進を図ると同時に、自他の心身の痛みや悦びを味わい、更には、闘争本能のコントロールや共存共栄の必要性を自覚することが期待できると説明。「講道館柔道の祖で教育者の嘉納治五郎先生は、『精力善用 自他共栄』という言葉を残されました。自分の力を善く用い、相手を認め、自他の心と向き合うことは人として生きていく上で大切なことです」。

古来「武術」は勝つための技術を追求してきたが、「武道」になって精神性が加わり、日本人の気質に大きく影響を与えてきたと話す。日本では「スポーツ」は社会性や遵法精神などを学ぶ機会の場でもあるとし、「世界の大会では、勝つことを至上命題にした、いわば手段と目的が入れ替わってしまっていることが多い。相手に勝つこと(他者比較)ではなく、昨日できなかったことができるようになったか、前より努力できたか(自己成長)を勝利と定義し直すことで、運動が得意でない子も成長の喜びを実感できます。チームにしろ町道場にしろ、単に競技力を上げる場所にとどまらず、スポーツというツールを使って、人生を豊かに生きるための力(非認知能力や人間力)を育む寺子屋になれる潜在能力を秘めており、そうした人材が増えることで街はどんどん住みよくなっていきます」と話した。

まとめ

両者はチーム競技と個人戦での視点の違いがあるものの、身体を通して「生きていること」や「他者との関り」を実感し、様々な課題に対して自分事として対応していける自信と共感性を養うことを重視している点は同じだ。社会は個々人が組み合わさって構成されており、どこか一つが脆弱になればそこから崩壊する危険性がある。まさに「One for all, all for one(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」であり、スポーツを通し、街をよくしていくことはできる。福山シティFCの理想は大いに賛同できる。