デジタル・情報化人材育成へ
エースシステムズ
県立福山商業高等学校

2021年11月01日号

  デジタル・IT化が叫ばれるようになって久しいが、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、その必要性は一気に高まった。政府も、まちや企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する一方で〝デジタル人材〟の不足が深刻だという。柔軟な発想ができる人材が必要だ。そんな中、高校・大学生に向けた人材の育成に取り組む福山の地元企業と、教育現場をリポートした。(高橋真木)

インターンシップを開始
即戦力レベルの人材育成

  創業40周年を迎える独立系ソフトウェア会社・㈱エースシステムズ(本社=福山市手城町1―9―45、岡田祥平社長(43)=顔写真、電084・923・2871)は、市内の大学生に対してインターンシップの受け入れを開始した。約3ヵ月の間に行われるインターンシップでは、プログラム設計書をもとに、使用理解、プログラミング、テスト、デバッグ(不具合の解消)および成果物作成等といった同社の新入社員が行うプログラム開発の体験や、仕事として製品を作り上げるプロセス理解の習得が可能。同社のエンジニアがマンツーマンで指導するという。

  かねてから人材不足の社会課題を見据えていた同社は、2015年から毎年夏休みに5日間コースで大学生に向けた体験講座を開講していたが、今回は即戦力レベルの人材育成に挑む。

  「夏休みの体験では、ITに触れるところから始めさせて頂いておりましたが、今回はスキル確認テストを実施し、合格者の方を対象に専門知識をお伝えします。馴染みのない方には難しく感じると思いますが、普段からITを意識して学習しておられる方であれば十分クリアできる内容です。奮ってご応募ください」と、岡田社長。指導担当にはエース級の社員を置くほどに、同インターンのスタートは念願だったという。学生が興味を持ち、挑戦することで適性を早期に判断し、実際にIT企業の現場に触れることができるメリットは大きいと話す。

  「現代において唯一の成長産業と言われるITではありますが、業界では人材の奪い合いが起こっています。これは大変なことです。採用の延長ではなく、社会のお役に立つために使命感を持って取り組んでまいります」。

  12月1日〔水〕から指導を開始し、募集は年間を通して随時受け付ける。WindowsPCが必要だが、貸し出しも可能で、軌道に乗れば自宅等でも実施可能だという。ほか、Java/データベースSql/Html基礎スキルと、インターネット環境が必要。専用のコミュニケーションツールと、来社時の交通費が支給される。

  問い合わせは業務推進グループの佐藤さんへ。
  同社は東京・大阪にも拠点を置く。今年度中に福山の企業支援に向けた取り組みを新たに開始するという。

情報ビジネス科新設
「起業家精神」を育成

福山商業高等学校

  広島県立福山商業高等学校(福山市水呑町3535、神田浩二校長、電084・956・1511)は、来年度から「流通経済科」と現在の「情報ビジネス科」を廃止し、新しい「情報ビジネス科」を設立する。広島県教育委員会による県立4商業高校で行われる学科の改編で、情報分野の学びを充実させると同時に、自ら仕事を生み出すことができる「起業家精神」の育成にもつなげていくという。

  1年生で商業の基礎を学び、2年生から「情報スペシャリスト」「会計・金融エキスパート」「地域マネジメント」「コミュニケーションマスター」の各類型に分かれて夢の実現を目指す。昨年度から既に、同改編で行われるプロジェクト型学習「ビジネス探究プログラム」を開始しており、生徒たちは1年生で「生きるとは」「15年後の社会とは」「商業の学びはどのような価値をもたらすか」など自分の生き方・在り方を見つめながら、ディスカッション形式で学習している。学ぶことの意義を考え、多様化する経済社会に対応できる主体的・協働的・創造的な力を身に付けた未来のリーダーの育成を目指す。

生徒達の学習の様子

  「中学生の内に高校卒業後の目標を固めて入学してくる生徒はまれで、教科書通りの教育だけでは目的意識は生まれません。思いを言語化する体験を積むことで、生徒は自己主張ができるようになっていきます」と、同校。1年間自分の生き方・在り方に向き合った生徒達は、2年生で起業家として必要なマインドセットとして「創造的思考力」「計画実行力」「適応力」「コミュニケーション力」「独創的発想力」「自己研鑽力」「批判的思考力」「転換力」「意思決定力」を身に付けるべく学習し、3年生で地域を題材としたビジネスプランの研究(課題研究)を行うなど、3年間かけて「課題解決型学習(PBL)」を学んでいく。同プログラム担当の一人・佐藤潤教諭は、平川理恵広島県教育長や他3校の教諭8人と共にアメリカを訪問し、PBLで有名な高校を視察。将来どの職業を選んでも、大切なのが起業家精神だと話す。

  「起業家とは、会社を起こすことだけではありません。会社で効率の良い作業や新事業を提案できるマネジメント力もそうです。本校は特に地元意識を持った生徒が多いので、そういった人材育成で地域のお役に立つことができれば」。

  同校はこれまで地場企業を中心に多くの卒業生を送り出しており、事務系就職率では高い実績を積んでいる。

  「今後は企画力を発揮する職種や、IT分野への人材輩出にも貢献したいと思っております。ご興味のある企業様は是非お問い合わせ下さい」。