福山市
認定・登録制度スタート
「福山ブランド」を作ろう!

2015年02月10日号

福山市のブランディングをサポートする本田勝之助さん

福山市のブランディングをサポートする本田勝之助さん

 福山市は2016年度に市制100周年を迎える。“福山”を全国に向けて発信する絶好の機会と捉え、同市では今、様々な取り組みがなされている。そういった動きを後押しする「福山ブランド認定・登録制度」がいよいよスタートする。これは、福山の地域資源を活用して生み出された産品・サービスや取組み・活動の中から、福山の魅力を高めて発信できる「モノ」「コト」などを「福山ブランド」として認定・登録するという制度だ。主催は、市の自治会連合会や商工会議所、大学など18団体でつくる福山市都市ブランド戦略推進協議会。認定・登録した産品や活動は、同協議会でPR等、各種支援をする。なお、協議会の事務局を市で担っているのは、昨年度発足した、その名もズバリ「ふくやま魅力発信課」(久保正敬課長)である。「行ってみたい」「住んでみたい」「住み続けたい」と思わせる、福山市の都市ブランド戦略を紹介しようと思う。(小林万里子)

何もないとは言わせない!
 読者は県外の人に「福山市ってどこ?」と尋ねられた経験はないだろうか。このような悔しく残念なエピソードを持っている人は、福山には少なくない。福山には自然、食、文化、伝統技術など、内外に誇れる素材が数多くあるにも関わらず「発信下手」

福山市都市ブランドのロゴマーク

福山市都市ブランドのロゴマーク

なため周知が進まない…と言われてきた。市制100周年を迎えるにあたり、市の魅力を多くの人々に届けて知名度を向上させる取り組みが本格的に始まった。「今までは個別の資源ごとの発信でイメージを作りにくく、知名度向上になかなか結び付かなかった。“戦略”としてコンセプト・ストーリーに基づいた統一感のあるイメージづくりが必要」と久保課長(前出)は話す。
 市のブランディングに参画、協力しているのは(株)ヒルサイドコネクション(福島県会津若松氏)社長で、内閣府「地域活性化伝道師」の地域プロデューサー・本田勝之助氏である。私たちは市民が自虐的に「ここには何もない」と言う場面を目にすることがある。それに対し本田さんは「(良いものがあっても)地元の人には当たり前過ぎて、かえってその良さに気付いていないことが多い」と指摘する。備後絣はじめ、琴や下駄の全国的な生産地でもあることに加え、書道が盛んだったり、女性の能楽師がいるなど、「“海外目線”で見ると福山には誇れるものがたくさんある。ここは、元来ある文化の成熟度が高い」と絶賛する。また、「JC(青年会議所)のような若い青年達の結束力・イベント力もすばらしい。まちづくりの力が総結集されたばら祭は、しっかり市民の中に位置付いている。さらに、小学校区にひとつずつある公民館が、まちづくりの拠点として機能しているのもすごいと思う」と感心する。本田さんは「まず福山の人が自分たちの町の魅力を自覚することが大切」と強調する。したがって、都市ブランド戦略を進めていく市のキャッチコピーは「何もないとは言わせない!」。ロゴマークは、「ばらとコウモリ」。紫のコウモリがピンクのばらの軌跡を描いている。ピンク色は「ローズマインド」(※思いやり・やさしさ・助け合いの心|ばらのまち福山のアイデンティティ)を、紫色は「誇り」を意味しているという。

ローズ・セッション
 本田さんはアムステルダムが行った、都市を盛り上げるキャンペーンを事例にひいて、「インナーブランディング」が大切であることを主張する。アムステルダムは、都市の資産は市民であるという立脚点に立ち、市民向けに彼らを巻き込むような活動から始めて、官民協働の団体を組織して運営しているという。また、創造都市(クリエイティブシティ)と呼ばれるアメリカのオレゴン州ポートランドに、本田さんは福山の都市ブランド戦略のヒントを見つけることが出来ると話す。ポートランドは環境都市として全米第一と評価されているが、その昔は「ローズシティ」と呼ばれ、ばらを作ることで民度を上げていった町。各学区でまちづくり計画を策定し、地区ごとにマルシェ(市場)を開く中でクリエイティブな人々が集まって官民協働が進んだと解説する。ポートランドには、ばら、学区ごとのまちづくり計画と、福山との共通点が見出せる。
 では、福山市民自らが価値を認めた地域資源に、さらに新しい価値を加える市のブランド化戦略のキーワードは一体何かー。それは「セッション」であるという。「セッション」とは互いに異なったものどうしを重ね合わせ、新たな価値をつくる方法。「セッション」の発想は福山のアイデンティティとも言うべき「ばら」から導き出されたもの。色や組み合わせで花言葉の意味が変わるばらには、重ね合わせる相手によって新たな価値を生み出す力があることに着目。それを「ローズ・セッション」(ばらのちから)と市では呼ぶ。先述したロゴマークは、「ばら」と「コウモリ」という全く異なるものを組み合わせ、「セッション」を象徴的にデザインしたのだという。

認定・登録制度
 市では「福山の魅力を知り、ワクワク楽しみながらセッションすることが魅力や価値を生み、福山が好きな人を増やしていく」「セッションにより、クリエイティブな課題解決も可能」と期待する。福山市都市ブランドの戦略は・ひとづくり(人材育成)・ものづくり(地域資源開発)・まちづくり(市民活動の充実や生活基盤整備)・ブランド認定・発信の五つである。このたびの福山ブランド認定・登録制度の募集は「産品・サービスなどの認定品部門」と「まちづくりなどの登録活動部門」の2部門。特に、「まちづくり活動」をブランド登録するのは全国でも福山が初めてのケースとなる。本田さんは「ブランディングの鍵となるのは“地域の人”。世界の冠たるブランドは、実は地域の活動を担っている数名のキーパーソンが立ち上げている」と明かす。
 応募で挙がってきたものは、四人の外部委員によって審査される。審査委員は本田さんに加え、ファッションジャーナリスト・生駒芳子さん、BRUTUS編集長・西田善太さん、コミュニティデザイナー・山崎亮さん。いずれもマスコミ登場の常連で発信力には定評がある人たちばかり。そういった人たちの“外の目”で評価を受け、協議会が決定する。1月末時点で応募は13件だが、問い合わせは数十件にのぼるという。久保課長は「応募の案件には、どこをどう改善すればいいのか審査会からフィードバックももらえるようにしたい」と言う。さらに、今まで課が開いた講座後には、名刺交換する人がとても多いのを目の当たりにし、「皆、“つながり”を求めている。情報発信のツール、人脈などを協議会でサポートしたい」。募集は27日〔金〕まで。応募の申請書は市のホームページからダウンロードできる。問合せは、ふくやま魅力発信課まで。電084・928・1135。