ポエック里海財団と三原市
「小佐木島特別展示会」
3/28から5/5に開催
世界的な千住博氏の作品紹介

2015年02月10日号

 

「小佐木島特別展示会」のポスター

「小佐木島特別展示会」のポスター

千住博氏との集いで。左から千住氏、ポエック里海財団の来山哲二理事長、采女信二郎・評議員

千住博氏との集いで。左から千住氏、ポエック里海財団の来山哲二理事長、采女信二郎・評議員

 三原市沖合の小佐木島(こさぎじま)で「自然と人間の共生」を目指し、2009年から同島の再生プロジェクト事業に取り組んでいる公益財団法人「ポエック里海(さとうみ)財団」(福山市南蔵王町2-1-12・ポエック㈱内、来山哲二理事長=ポエック社長、電084・922・8551)は、三原市(天満祥典市長)と共催で3月28日〔土〕-5月5日〔木・祝〕(午前9時30分-午後4時)に「小佐木島特別展示会」を開催する。目玉は日本を代表する日本画家・千住博氏が描いた「TIDE WATER=タイド・ウォーター(潮水)」が紹介されることで、今回の展示会と同法人のプロジェクト事業をリポートする。(西原 洋)

メイン会場は「ビオハウス」
 「小佐木島特別展示会」のメイン会場は古民家を改修して完成した「ビオハウス(BH)1&2」。そこで千住氏が同島並びに島なみを含めた瀬戸内海をイメージして描いた120号の大作「TIDE WATER」や、代表作「WATER FALL=ウォーター・フォール(滝)」(10号)などが紹介される。入場無料。
 ビオハウスは、アートによる環境・地域再生に取り組んでいる現代美術作家・柳幸典氏とデザイナー・八木健太郎氏が、ポエック里海財団のコンセプト「自然と人間の共生」に賛同し「集落再生プロジェクト」として取り組んだ。建物の面積は木造2階建て延べ172㎡。工事は㈱一瓢組(福山市田尻町)が行った。
 期間中の3月28日〔土〕-30日に「海カフェHOME」もオープン、タコカレーやパスタなどが提供される。問い合わせはNPO法人みはらまちづくり兎っ兎(電0848・63・5575)へ。
 特別展示会は三原市民ギャラリー(三原市城町)でも行われ、来山理事長が所蔵している水野晃一氏の「海」(200号)と田中猛氏の「初夏の剱と草月渓流」(130号)などが展示される。ただし、期間は3月24日〔火〕-4月8日〔水〕。入場無料。

定期航路は1日4便に
 このほか、期間中、同島隣接の宿弥(すくね)島でロケした映画「裸の島」(新藤兼人監督、1960年公開)のDVD上映(会場・小佐木公民館、入場無料)や、地元産の柑橘類などを販売する臨時の土産店「しまの幸」などが島内に臨時オープンする。
 来山理事長は「千住先生の作品をご覧いただいた後に、潮目により川のように流れる『柄鎌瀬戸』から自然海岸が多く残る里海を散策し、温かい島の人たちも接していただければ」と願っている。
 これに伴い、三原港から高速艇の定期航路も現在の1日3便から4便に増便する予定で、三原市など地元の支援体制も整えられている。
 特別展示会に関する問い合わせは三原市役所の総務企画部・政策企画課に開設される事務局(電0848・67・6001)へ。

千住氏が財団の理念に感銘
 ところで、最大の話題となる千住氏の「TIDE WATER」について。アメリカ・ニューヨークを拠点に国内外で活躍する画家が、なぜ瀬戸内の離島を題材にした作品を描こうとしたのか。
 千住氏は1958年東京生まれ。82年東京藝術大学日本画専攻卒業、87年同大学大学院博士課程修了。代表作の「WATER FALL」は95年のヴェネツィア・ビエンナーレで東洋人として初の名誉賞を受賞した。98年より大徳寺聚光院の襖絵制作にとりかかり、2002年の伊東別院完成に引き続き、13年京都本院の襖絵が完成した。また、07年-13年に京都造形芸術大学学長を務め、現在東京藝術学舎学舎長。弟は作曲家の明氏、妹はヴァイオリニストの真理子さん。
 来山理事長は、以前から千住氏のファンで、13年11月に天満屋福山店(福山市元町)で開かれた「千住 博展」で、今回の特別展示会で紹介される「WATER FALL」を購入。千住氏との集いで、ポエック里海財団が目指す理念「自然と人間の共生」を熱く語り、「TIDE WATER」の制作を依頼、直ちに「描かせていただきたい」という返答があったという。
 「地方の一企業が関わる財団のために、世界で活躍する大画家がわざわざ作品を描いていただけるとは、と一瞬耳を疑った」と、来山理事長は驚く一方、「いままでコツコツと小佐木島でやってきた事業が間違いでなかったことを再認識し、今後さらに推し進めたい」と、決意を新たにしている。

新幹線の駅で一番
近い距離にある離島
 ポエック里海財団は、ポンプ、防災機器、環境関連機器製造・販売のポエック㈱が母体。「里海」とは、人の手が加わることによって自然環境が保たれ、かつ生産性が高められている沿岸部。
 小佐木島は面積50万㎡で、周囲3・2㎞。天然の海岸・干潟も多く残された自然観察や環境学習の好適地。しかも三原駅から徒歩と高速船で18分間という全国にある新幹線の駅で一番近い距離にある離島として知られている。
 来山理事長は以前から「赤ちゃんからお年寄りまでの人々が自然に親しむ場を作りたい」という希望を持っており、その希望に合致したのが小佐木島だった。現在まで11万8800㎡を取得している。
 財団の事業目的は「小鷺島ビオアイル計画」の実施と運営を強力に推進することで、「自然と共生する誇りある文化と歴史を、芸術の力を借りて島を一個の生命体を捉えて新たに再生する」という。「小鷺」にしたのは、昔は「佐木」ではなく「鷺」を使っていたためで、「ビオアイル」には、「バイオ(生命工学)」と「アイランド(島)」という意味がある。
 このほか、「瀬戸内里海文化」を芸術としてとらえ、表現し普及する▽小鷺島ビオアイル計画に関わる動物、植物、生物の保護育成▽環境を保護する人材育成などなどの事業計画が考えられている。詳しくはポエック里海財団のホームページ((http://satoumi.or.jp/)を参照のこと。