福山市立大学 渡邊 明教授
福山市市制100周年に向けて
産学連携サロンを月1回開催
2015年02月10日号
売れる商品を作り活性化目指す
福山市立大学(福山市港町2-19-1、稲垣 卓学長、電084・999・1111)都市経営学部の渡邊 明教授(69)を中心とした“農商工連携を目指すチーム渡邊”は1月30日、同大学で「産学連携サロン」の第1回を催した=写真。広島県東部菓子商工業協同組合(森下慶一代表理事)の役員や会員をはじめ、食品・流通関係を含めた12社15人と市関係者が机を囲み、市場の動かし方や業界全体の活性化についての講義を受けた。その中で渡邊教授は、今後1-2年の間に「福山市市制100周年」を記念する菓子シリーズを展開し、ひいては備後圏の活性化を目指そう-というプランを紹介して参加者からの賛同を得た。今後は毎月1回同大で研修会を開いていくことになった。
渡邊教授は、ものを売るためにはストーリー性が重要であると説明。マーケティング論の基本である4P(製品・価格・流通・プロモーション)が紹介された。中でも購買意欲を掻き立てるためのプロモーションとして、来年7月の福山市市制施行100周年を利用しようというプランが提示された。
まず、こだま食品㈱(同市駅家町法成寺1575-9、児玉昌造社長)製の食品パウダーを用意し、各協力菓子店が得意な商品に仕上げて販売するというもの。その際、各商品には「祝・市制百周年 チーム渡邊」と書かれた焼印を捺す。これがブランドを作る。パウダーは毎月変わり、それに合わせて商品も次々変わっていく。その中で、売れ行きや購買層などを調査し、月1回程度集まって情報を共有しながら、マーケット理論に照らして売れる商品づくりに活かしていこうという。ゆくゆくは、SNS等ネット網を通して情報の共有と意思疎通がはかれれば-と将来像も明かした。焼き印は㈱キャステム(同市御幸町中津原1808-1、戸田拓夫社長)に依頼して製作する。渡邊教授は「福山市は鋳造の町でもあります。食品と鋳造という関連性のないものが融合するところに新規の創造が生まれます」と鼓舞する。
ふたつ目の策として、三重県津市に本社がある平治煎餅本店で作られている「福引煎餅」を使い、県をまたいだ連携事業を-という案も出された。同煎餅は三角形の巾着状で中が空洞になっており、同市では昔から節分の時期に買い求め、中の福引を楽しみに割って食べるという風習がある。その福引の代わりに、各菓子店特製の干菓子を入れる、というものだ。ほかに、キャステムの戸田社長が代表を務める日本折り紙ヒコーキ協会製の紙ヒコーキを入れるという案も出された。
最終的には、「チーム渡邊」が5年前から毎年行っている「伊勢神宮奉納プロジェクト」に直結させたいという。伊勢神宮(内宮)への奉納は、食の安心安全について厳格な基準があるため、商品及び事業所に対する信頼性を裏付けるものとして強いプロモーション効果が期待できるのだという。
森下代表理事は「一昨年の菓子博や昨年の甘いものフェスタのように、会員事業所が協力して菓子業界の活性化を図ってきました。この度の渡邊先生の提案も魅力的であり、会員にも協力を呼び掛けていきたい」と前向きに語った。
渡邊教授は元三重大学人文学部名誉教授で、中部経済産業局地域産業資源活用事業評価委員会や三重ブランド選定委員会の委員長なども歴任し、現在は同大工学研究科リサーチフェローも任じている。異業種技術の組み合わせや食材の加工過程での廃棄物を活用した新商品を開発し、各事業所の収益増や廃棄物の減量化を目指してきた。4年前から福山市立大に教授として備後地域の業者と東海地方とを農商工連携で結ぶ素材発掘と商品開発に勤しんでいる。