すし惣
大将 石橋達男さん
本場江戸前寿司の技を

2023年09月01日号

いしばし たつお(70)

巧みな話術と共に楽しむ
福山市昭和町4─26アートイン昭和町1階
電084・983・0866

福山に旨い江戸前寿司の店を作りたいという、一心グループ真田奈津基社長(すし惣オーナー)の熱意にほだされて、夫人を東京に残し2021年10月、単身来福し、すし惣を任されることになる。わずか7席の、隠れ家のような店だが、本場の江戸前寿司が味わえるという。すし惣の魅力は、カウンターで石橋大将が握った寿司を、巧みな話術と共に食すことで、手元が見えるよう計算された台越しに技を目にして五感で楽しめる。石橋大将に江戸前寿司などについて聞いた。

─寿司職人として働くようになったきっかけは

すし惣

「中学卒業後、家庭の事情もあり働くことになったのですが、たまたま住み込みで入ったのがこの世界(寿司職人)だったのです。最初は丁稚奉公だったのですが、北大路魯山人が腕を振るっていた星ヶ岡茶寮で1番弟子として活躍していた先輩について修業し、寿司・日本料理について学びました。26歳で独立し、のれん分けで『㐂文寿司』を開店して50歳まで続け、その後、銀座の『寿司椿』に指導者として入り後進の育成に努めました」

─寿司はシャリが命と言いますが、こだわりは
「シャリの善し悪しは、気候、精米、種類、水分量、炊く量、研ぎ方、浸水時間、蒸らし時間、炊き方などに左右されます。米が炊き上がったら、熱いうちに素早く、赤酢を使い、湯気で米粒一つ一つに酢がまんべんなくまわるように混ぜ合わせますが、酢、塩、砂糖の配分は、気候やその時の状況によって変わってきます」
─江戸前寿司の特色について一言で
「ネタの一つ一つにひと手間をかけ、素材の味を最大限に引き出すことです」

─ネタはどんなものを使われますか
「ネタは季節や仕入れの状況によって変わってきますが、東京の豊洲からコハダ、穴子、マグロ、雲丹などを仕入れます。地元からはネブト、スミイカ、アコウ、太刀魚などで、10月になればワタリ蟹が入ってくると思います」

─自慢の逸品があれば
「江戸前煮穴子ですね、焼き穴子と違い、口に入れた瞬間、溶けるような美味しさがあり、煮詰めも甘みが凝縮して、コクが広がると思います。コハダの〆物、マグロの漬けなども味わって頂ければと思います」

─福山の印象は
「福山のお客様は漁港が近いため、幼い頃から地元の新鮮な魚介類に縁があり、口の肥えた方が多い印象です。地元の方や、出張で福山に来られた方にも、江戸前の技を瀬戸内海の魚で味わってもらえれば」

─メニューは
「『おまかせ』が料理5品と寿司10貫税込2万2千円、『季節のおまかせ』はムラサキウニをふんだんに使って仕上げた限定コースで税込3万3千円です。その日のネタに会わせた日本酒・ワインのペアリングも好評です」

営業時間午後5時─11時(最終入店9時まで)。日・月曜日定休。

石橋達男=1953年4月10日生まれ。東京都葛飾区(帝釈天の近所)出身。中学卒業後、東京の「㐂文寿司」に丁稚奉公に入り、北大路魯山人が腕を振るっていた星ヶ岡茶寮の1番弟子に師事。26歳でのれん分けして独立「㐂文寿司」開店。その後銀座「寿司椿」で後進を指導。2021年10月、すし惣・大将。趣味・音楽鑑賞。