政経パトロール
福山駅前再生本格稼働へ
民間活力でにぎわい創出

2018年06月01日号

デザイン会議で戦略策定

5月21日に開かれた「デザイン会議」

 福山市が策定した「福山駅前再生ビジョン」を進める官民と警察が一体となった「デザイン会議」の初会合が5月21日、市役所で開かれ、民間活力でにぎわいを創出し、福山独自の産業をクローズアップする再生方式を確認した。福山駅周辺では、キャスパ・トモテツビル、NHK福山放送会館跡地、エム・シー福山ビルの再開発が決まっており、 民間のまちづくり会社㈱築切家守舎(福山市伏見町4―33、藤本慎介社長)のリノベーション事業が本格化するなど、新たな都市創りに向け、官民が融合した再生プログラムが進行している。(稲毛一郎)

キャスパ跡にマンション・商業施設の建設が予定されている

 会議は、駅前再生協議会座長・清水義次さん(㈱アフタヌーンソサエティー社長)の司会で進められ、「都市機能・公共空間のあり方」、「都市空間と民間空間の調整」、「公共施設の配置及び活用」、「公民連携によるまちづくり」―などについて、2019年度末まで計6回開き検討していく。エリアは福山駅前、福山城周辺と、伏見町、三之丸町、西町、霞町、明治町、寺町、城見町、吉津町各周辺。

マンション建設工事が進むNHK福山放送会館跡地と、同ビル後ろのエム・シ―福山ビルを解体してホテルを建設

 アドバイザーに嶋田洋平さん(㈱リノベリング社長)、明石卓己さん(㈱レイデックス社長)が選ばれ、福山市からは建設局長、市長公室長、企画財務局企画制作部長らと、福山市立大学都市経営学部・渡邉一成教授が参加。関係機関の広島県、福山東警察署のほか、オブザーバーとして独立行政法人都市再生機構、㈱CAP、シャープ㈱など企業関係者が参列した。
 
民間活力が街を変える

リノベーションで街が変わる。左から2軒目に池口精肉店が飲食店出店を予定している

 清水座長は「2月にリノベーション事業提案を行い、予想を上回るぐらいの投資の話が持ち上がっており、事業家の相談が着々と進行している。補助金に頼らず自立して事業を進め、今後魅力あるエリアをつくっていく。1年前47万都市がどうしてこんなに寂れるのだろうと思っていたが、印象が変わってきた」と民間活力が街を変えていくことを強調した。
 さらに「でかい建物ができると町がよくなるという考え方は過去のこと。どこにでもあるようなモノができても 魅力にならない。墓標化してしまう。クオリティーの高い投資をしてほしい。1回投資した公共施設に再投資することはいいこととされていなかったが、道路の使い方や、公園を変えていく必要がある。デザイン会議が、公共のプロジェクト、民間のプロジェクトのよきアドバイザーになれば」と訴えた。
 
15年で200店舗誘致
 
 アドバイザーの明石さんは、流通形態の変化で廃業撤退が増えていた岡山市問屋町(卸センター)の使われていない倉庫・事務所に、カフェ、カレー、イタリア料理などの飲食店や、衣料、雑貨小売店を誘致して、15年で200店舗に増やし若者らを集客、賑わいを創出した実績がある。
 「だれか代表がいて、その人のために働くというのではだめ。『ないものを持ってくる』というグランドデザインを描き変えていく必要がある。最初、岡山市にいくら掛け合っても何もしてもらえなかったが、何とかしたいという20人を集め、20年後の姿を描いてやってきた」と、リノベーションする際のグランドデザインの大切さを話した。
 会議では、伏見町で進んでいる空き店舗のリノベーションをきっかけに、道路、空間のあり方を検討していく方針を決めた。大型商業施設を誘致してその集客に頼るのではなく、ピンポイントで「ないものを持って来て」個性的な街づくりを提案するという。
 
モデル都市に
福山市が選ばれる
 
 国土交通省と内閣府は3月、地方再生のモデル都市(地方再生コンパクトシティ)を選定し、福山市が選ばれた。  
 全国から、空き家対策、城下町の再生など、ハード・ソフト面から総合的に取り組んでいて、官民連携のもと、民の力を最大限引き出し、地域の「稼ぐ力」を再生する取り組みをしている都市を募集し、32都市を選定した。
 モデル都市にはハード面では社会資本整備総合交付金が、ソフト面では地方創生推進交付金が支給される。中国地方では福山市と竹原市が選ばれた。

リノベーションと
建設ラッシュ

 築切家守舎が開発を予定している「のみ喰い処とらや」(同市伏見町1―16)があった5階建てのビル1階に、㈲池口精肉店(同市新涯町5―31―39、池口章人社長)が出店を検討しており、同社のリノベーション事業が本格化しそうだ。
 マンションデベロッパー、穴吹興産㈱(高松市鍛冶屋町、穴吹忠嗣社長)は、旧商業ビル「キャスパ」の建物(地下1階・地上8階建て延べ約2万6千㎡)の一部を取得。建物を取り壊し、マンションを建設しようとする動きがある。1、2階が商業施設になる見込みだ。
 NHK福山放送会館跡地は㈱信和不動産(広島市西区横川町3―8―6、和田正男社長)が取得し、マンションを建設する計画が進んでおり、同跡地東側の「エム・シー福山ビル」は、㈱エム・シー福山(福山市東桜町1ー41、山本攻一社長)がビルを解体し新しくホテルを建設する。  
 福山駅周辺で、リノベーションと建設ラッシュが続きそうだ。賑わい創出に市民の期待がかかる。